【第1部】第3話 北西にいるはベストフレンズ

 その夜。


 きのえとあおいは何とか野宿できそうなトコロを見つけ、適当に探してきた食べ物を広げ、夕飯の真っ最中だった。
 それにしても並べられている食べ物は、生の野菜、生の果物ばかり。
 動物が食べる分には差し支えないだろうが、人間が食べるのにはあまりにも栄養バランスが悪すぎる。


「肉がくいて~・・・」
 きのえくん、ぼやく。
「きのえくん、それは言わない約束じゃないか・・・」
 あおいくん、ローテンション。


 そう、つまり肉はない、野菜は生のまま。あとは果物。
 よくて魚肉が4、5日に一度食べられるくらいで、牛や豚、鶏肉なんかは、簡単に商店街で手にはいるものではない。だってこの島に食用の牛や豚がいるハズもないし・・・。
 もし、何らかの手段で手に入れたとしても、コンロとフライパンを持ったみかどに先に持っていかれるのがオチだ。
 ・・・・・・この2人はどうやってその体型を維持しているのだろう・・・。


 あまり満腹感は得られなかったが、2人はとりあえず、食事を終えた。
 そしてふと、あおいはこんなことを呟く。
「そういえば、あの子大丈夫だったかなぁ・・・」
「あの子って?」
 何となく予想はついていたが、きのえは一応聞いてみた。


「ささらちゃんだよ。きのえくん、昼間結構キツイこといったろ。だから・・・」
 そして案の定、昼間の少女の名前が出てきた。
 自分の服をゴルフウェアー呼ばわりしたよそ者の少女を、きのえがよく思っているはずもない(自分からつっかかっていったんだケド)


 ・・・きのえくんご立腹。


「あ~、そうかいそうかい、じゃあ俺が悪いっていいてーんだな、あおい・・・」
 そういいながらきのえはつたのムチをビンっとはり、その背にはトムとボブをひそませる。
 あおいくん大ピンチ!!
「そんなコトないです!!きのえくんは悪くないです!!!」
 またトムやボブに頭をかじられてしまうなんて、たまったものではない。
 あおいは必死になって謝った。


 それで機嫌をなおしたきのえは(早)、ムチとトムとボブをしまい、再び地面に腰を下ろした。
「わかればいいんだ、わかれば」
 エラそう。
「ま、あいつ単純そうだったし、そんなに気にするこたぁねーだろ」
 そしてきのえはケッと悪態をついた。


「あぁ、そう。あたしって単純そうですか」


 すると突然、きのえの背後からあの昼間の少女の声がした。
「ささらちゃん!」
 きのえと向き合ってたあおいには、ばっちりその姿が見えている。あおいはその少女の名を呼んだ。


「な、なんでおまえがここにいるんだよ!」
 きのえは驚いてささらの方を振り返る。
 ささらの方はちょっと不機嫌気味にこたえた。
「あんた方の夕飯、持ってきてあげたの」


 それをきくと、あおいは目を輝かせてささらにいった。
「本当ですかー!?」
「本当よ、ホラ」
 ささらは両手にもっている、お盆にのった夕飯のセット2つをあおいに見せた。

 その上には白いご飯にお味噌汁、そしておかずは和風ハンバーグ。それからちゃんとお野菜もネ。
 野宿では決して食べることのできない、家庭的なあったかい料理だった。
 これぞ2人の求めていた夕ご飯!


「昼間、ロクな物食べてないっていってたでしょ?だからみかどさんが作った残り物、こっそりもってきちゃった」

「ありがとー!」
 あおいは喜んで、ささらから夕飯をうけとろうとした・・・が。


「誰がそんなコト頼んだ?」
 きのえが余計なことをいう・・・。
 ささらはそれを聞いて、怒りの四つ角を額に浮かべた。


「あ~ら、余計なお世話でしたかしらぁ~?」
 そして皮肉たっぷりに言い返してみると、きのえも負けじと皮肉た~っぷりに言い返してきた。
「あったりめーだろ。女に助けられるほど落ちぶれちゃいねーっつーの」


 ぷっつん。


「あぁ、そうですか!そりゃあ悪うございましたネ!じゃあこれは持って帰ります!!」
 ささらちゃんついに激怒。
 ふわりと空に浮かび上がり、さっさと帰ろうとしたが、ささらとともに夕飯まで帰ってしまうのは困る!


「待て!」
「待って!!」
 きのえとあおいは、ささらが空高く浮かび上がる前に彼女の足をつかんだので、


 びたんッツ!!!


 ささらは顔面から地面に打ち付けられた。
 ご飯がほしいなら素直にほしいっていえばよかったのにねぇ、きのえくん・・・。




 ・・・で。
 ささらは顔面をすりむいてしまうハメになり、すっかり不機嫌になってしまった。
「ゴ、ゴメンな、ささらちゃん。コレおいしいよ」
 あおいはそんな彼女をなだめるように、優しくささらにいった。
「ううん、大丈夫」
 しかし、あおいに話し掛けられると、ささらは笑顔でこたえる。
 そう、あおいには友好的なのだが、


「あたしが作ってるわけじゃないから、毎日は持ってこられないケド、もってこられる日はあおいさんの分、ちゃーんと持ってくるからネ」
 きのえには冷たい。
「一息でいった上に、ナイスなしかとも混じってるな」
 きのえは顔をひきつらせた。


 あおいは険悪な空気をなごませようと、慌ててささらに話し掛けた。
「でも、本当にありがとう。会ったばっかなのに、こんなに気ぃ使ってくれてウレシイよ」
 あおいが心から感謝していうと、ささらもウレシそうに笑って答えた。
「だって、植物使いのクセに毒キノコ食べて死にかけて、なおかつゴルフウェアーきちゃってる根性悪い人と、あおいさんが心配だったんだもん」
「おめー俺のこと嫌いだろ」
 しかしきのえも負けずにささらに言い返す。


「初対面のやつにここまでするなんて、警戒心のない単なるバカじゃねーの?」
 当ー然、その言葉はささらの気に障る。
 だからささらは、冷ややかな笑みを浮かべて、きのえにいってやった。

「あぁ、さっきそっちの野菜にウジ虫5匹いれといたよ」
 きのえがぎょっとして野菜の中を見ると、・・・・・・・・・・・たしかにウジ虫5匹がいた。
「いつの間に・・・」
「ウジ虫は根性悪い人によ~~~くきくんだって(嘘)。さぁ、食え☆」
「そのあどけない笑顔やめろ」
 どうにもこうにも相性が悪いお二人らしい。


 そんでもって・・・。
「じゃあごちそうさま、ささらちゃん」
 あおいはにっこり笑ってお盆をささらに返した。
「いいえ。またご飯もってこられる日は持ってくるネ、あおいさん
「おめーもいい根性してんな」
 ささらのさり気な~い無視に、怒りを募らせる一方のきのえ。


「それじゃ」
「またねー、おやすみー」
 軽くあいさつをすませて、ささらはピュア家の方へと帰っていった。


「まともなご飯、食えてよかったね、きのえくん」
 ささらが去っていった後、あおいはご機嫌できのえにいった。
「まーな」
 ご飯はおいしかったけど、とくにそれを顔にだしはせず、きのえはあっさり返した。
「ささらちゃん、いい子だったね」
「俺にそれをいうか、あおい」
 今日も2人はまた野宿だけれど、今日はおなかいっぱい。
 だからきっと、いい気分で寝られるコトでしょう。




「ただいまー」
 持っていった食器が見つからないようにこっそり隠しながら、ささらはピュア家にカムバック。
「おかえりー、遅かったなー」
「きぃー☆」
 それを迎えてくれたのはピュアくんとぽち。
 そしてみかどは食器を洗っている真っ最中。
 さりげな~く洗い中の食器の中に、きのえとあおいの使った食器を混ぜておけば大丈夫だろう、とささらはにらんだ。


「どこいってたんだ?」
 みかどは食器を洗いながら尋ねた。
「え、あぁ、えーっと・・・」
 みかどと敵対してる、きのえとあおいの名前を素直に出すワケにはいかない。
 ささらは少し考えて・・・。


 そして嬉しそうににっこり笑ってこたえた。
「友達のところ!」

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