「兄ちゃん兄ちゃん」
ひのとと橘がピュア家を去った後、ピュアくんは相変わらずの無表情でみかどを呼んだ。
「何?」
「ひのとのヤツ、『お兄ちゃんが帰らないっていうんなら、こっちにだって考えがあるからね』なんていってたケド、何するツモリなんだろーな」
「さぁな」
長い長い口論の末、みかどは決してひのとと共に帰ろうとはしなかった。
ひのともあきらめじとしつこくネバったが、結局逆ギレして、今ピュアくんがいったようなセリフを吐いて、去る結果となってしまった。
「口だけだろ、口だけ」
みかどはひのとの最後の言葉などちっとも気にかけない様子で、相変わらず洗濯物を干していた。
長年付き合ってきた兄弟なのだから、行動パターンくらいは兄としてわかっている。
昔ケンカをしてそんな言葉を何度も言われたが、結局何もできたためしがなかった。
おそらくまたしつこくピュア島には来るだろうが、そんなたいしたコトはしてこないコトくらい、みかどにはお見通しだった。
「もー、お兄ちゃんほんっとにムカつくー!!!」
一方こちらは、どんなに頼んでも一緒に帰ってくれなかったみかどに腹を立て、ずんずん森の中を進んでいくひのと様。
橘にしてみれば、みかどが帰らないコトくらいは予測がついていたので、とくに取り乱しもせず、何も言わずにひのとの後をついていく。
それに、得たいのしれない島からさっさと帰れる結果になったので、都合はよかった。
「それにしてもひのと様、最終手段がある・・・ような発言をなさってましたが、いったいなにをお考えで?」
そしてピュアくんを同じ疑問を抱いた橘は、ひのとに直接聞いてみた。
「決まってるよ!お父さんにいいつけてやるんだ!!!」

ソレを聞いて、思わずコケて、木に頭をぶつけてしまう橘。
「ん?橘、どうしたの?」
橘がズッコケた意味なんてわからないひのと様は、まっすぐな瞳で橘にたずねた。
橘はぶつけた額を痛そうに片手でおさえ、
「いえ、何でもありません」
と、答えた。
総帥でも連れ戻すコトができないからこんな騒ぎになっているのにと思いつつ、そんなおバカなひのと様にも、橘はメロメロだった。
そんなワケで、早くも撤退を決めた2人は、乗ってきた潜水艦のある浜辺へとたどり着く。
「あれ?」
ひのとが広々とした浜辺を見渡したトキだった。
「橘、あそこ」
女の子の姿を見つけた。
「女の子が寝てるよ」
ひのとは橘の服のすそをクイっとひっぱる。
橘はひのとの方を振り返りながらいった。
「何をいってるんですひのと様、この島に女の子なんているわけがないでしょう・・・」
そうはいったが、橘の視界にもその女の子の姿が入ってきた。
「・・・本当ですね。しかもこんな浜辺で昼寝ですか・・・」
半ば呆れ顔で、橘はつぶやいた。
「誰かな、話しかけてみよう!」
ひのとはさっきまでの怒りはどこへやら、超ご機嫌でそちらへ向かっていってしまった。
「ひ、ひのと様!お待ち下さい!!」
早くこんな島とはおさらばしたかった橘も、やむをえずひのとの後をついていく。
ひのとは浜辺でぐっすり眠っている女の子の近くへとやってきた。
ひのとはその女の子を起こさないように、そ~っと彼女の顔を覗き込んでみた。
(あ、かわいいv)
素直にそう思うひのと。
気持ちよさそうに寝入っているその少女は、いうまでもなくささらである。
いい夢でも見ているのだろうか、幸せそうな顔で眠っているささらを見て、ひのとは思わずほほえましい気分なる。
結局起こすこともせずに、ただただ黙って、ささらをじ~っと見つめていた。
「ひ、ひのと様、そんな娘はほっといて、さっさと帰り・・・」
息を切らせ、橘はやっとひのとに追いつく。
ふと、昼寝真っ最中のささらの顔を見て、思わず言葉を切った。
(この娘は・・・!)
どうやらささらを知っているらしい橘。
一瞬驚きはしたものの、すぐに落ち着きを取り戻した。
(なるほど、ここに住み着いたという噂は、本当だったようですね。ヤツが許すはずないと思っていたのですが・・・)
ヤツって誰ですか。
(ソレにしても、あいっかわらずこの小娘は・・・)
ナレーターの質問を無視しやがりまして、橘はジト目でささらを見下した。
(人目もはばからず、こんなところでどーどーと昼寝なんかして・・・)
ふと、橘はささらの横に座って、じぃっと彼女の顔を見つめているひのとに気づいた。
「ひ・・・ひのと様!?」
『こんな小娘なんかジロジロ見るんじゃありません!』ってなカンジで、橘がひのとの名を呼ぶと、ひのとは橘の方を振り返り、眉をしかめて人差し指を口元にあてた。
「しぃッ!」
そんなひのとの態度にあっけにとられてしまう橘。
「ダメだよ、橘。この子がおきちゃう」
起こしちゃいけない理由でもあるんか!?と、橘は疑問に思う。
観察力のするどい橘は、すぐにひのとのおかしな様子に気づいた。
「ひ・・・ひのと様・・・」
橘がひのとに話しかけようとしたそのトキ、ひのとが
「かわいいー☆この子♪」
なんていうモンだから、橘氏、大きく動揺。

「何ですって!?」
「しぃッ!」
橘が大声を出すと、ひのとは再び人差し指を口元にあて、そういった。
橘もまたすぐに冷静になり、ふぅとため息をひとつ。
そして落ち着いた口調でひのとにたずねた。
「ひのと様、まさかとは思われますが、あなた様はもしやこの娘が・・・」
「可愛いよネーv」
「何ですって―――――――――ッツ!!?」
「だからしィーってば!!」
ひのと様の即答に、橘ってば取り乱しまくりだ!
しかし、橘が思っているような感情を、ひのとは持っていない・・・のは、読者様ならわかるハズです。
「異性」として、特別な感情など持ってはおりません。
昼寝してる可愛い女の子を微笑ましい気分で見つめて・・・。
小動物を愛でるのと、似たような感覚なのだと思う。
しかし、橘にしてみれば、今はひのとがささらに恋しちゃったと勘違いしているので、正気の沙汰じゃあない。
「あ、そぉだ☆」
ひのと様、ちょっとひらめき、橘に笑顔で提案してみました。
「橘、この子僕ん家へつれて帰ろうよ♪」
橘、驚愕。
「このままですか!?」
「うん、そーっと運んであげれば平気だよ」
「無理です!!だいたいそんなのは、ただの誘拐というんです!!」
「そんなコトないよ。一緒に暮らすだけだもん」
「一緒に暮らすッッツ!!???」
いやはや、ひのと様。
本気でささらちゃんを小動物扱いしてらっしゃいます。
その辺でのんきにお昼寝してるワンコや猫ちゃんとはワケが違うとゆーのに。
しかし、橘にしてみれば(以下略)
「橘ぁ、もっと静かにいってよ」
ひのとはほほをぷぅっと膨らませていった。
(一緒にくらす・・・!?ってこと同棲!?あるいは結婚ッツ!!???)
もはやひのとの言葉など、耳には入っていない。
「ひのと様!そんなに早まらなくても・・・!!」
早まってるのはアンタだ。
「橘」
ひのとはめずらしくキリリとした表情で、橘の方を振りかえった。
「僕はもう17歳だよ。子ども扱いしないで、僕の好きなようにさせてよ」
立派な顔してこんなコトいっちゃうモンだから、橘はもう爆発せずにはいられないッ!
「私は反対ですッ!!こんッな小娘となんてッッツ!!!」
「ん~・・・・」
さすがにここまで大声を出されては、ささらも目が覚めてしまう。
ゆっくりと体を起こし、頭をぽりぽりかきながらあたりを見回す。
「た、橘ぁ、おきちゃったじゃないか!!」
「・・・みたいですね・・・」
橘は気まずそ~うに目をそらしつつ答えた。
「ん?」
ささらは自分の目の前でなにやら言い合っている男を見た。
見覚えのないこの2人に、ささらは眠そうな顔で尋ねた。
「・・・・・・・・だれ?」
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