南海に浮かぶ孤島、ピュア島は、今日も快晴、とっても気持ちのいい陽気。
「ただいまー!」
ピュア家の扉を開いて帰って来たのはささらちゃん。その背には夕飯の材料をたくさん入れたかごつき。
「おー、おかえりー」
ピュアくんとぽちはかけ足でささらを迎える。
「おいしそうなの、いっぱいとってきたよー☆」
「わーい☆」
「きぃー☆」
表情こそあまり変わらないが(点目で)、ピュアくんとぽちは大喜びでかごの中を覗きこむ。
「あれ?みかどさんは?」
ふと辺りを見回して、ささらがいった。いつも材料とって帰ってくると、ちゃんと家にいるのに、今日に限って彼が居ない。
「わかんない、どっか行っちゃったぞ」
ピュアくんはおいしそうなりんごをかじりながら、無関心な顔でいった。
「ふーん、めずらしいわネ。一人でどっか行っちゃうなんて」
ささらは不思議そうに言った。
みかどは南の森の中を足早にかけていた。
(くっそ、くれないのヤツ、どこにいるんだ?)
何故友達いない暦19年の吐血男-はっきり言ってみかどは嫌い-を探しているのか?
・・・つい2、30分前のコトだった。
「やっほー、ピュアくん、ぽち、みかどさーん!」
仲良し小動物コンビ、とおるくんとたかしくんが今日もピュア家に遊びに来た。
「やぁ、とおるくんにたかしくん!」
「きーてきーて!さっき海岸でね、人に会っちゃった!」
「人ォ?ささらとか番人連中じゃなくて?」
とおるくんとたかしくんの言葉を不思議に思ったみかどは、食器を洗いつつ、彼らに尋ねた。
「ううん、初めて見た人だったよ」
「キラキラのなが~い金髪なの!女の人かと思っちゃった!」
また新たなバロック団員の刺客が、親父に命令されてやってきたのかなと、みかどは思った。
「それでネ、すっごくいい人だったんだ♪」
「うんうん、お菓子ももらっちゃったしネ☆ピュアくんたちにもあげるー」
「おぉ、ありがとー」
そういってとおるくんとたかしくんはピュアくんとぽちにお菓子を差し出した。
それを受け取ると、ピュアくんとぽちはおいしそうにお菓子をほおばる。
「ほれれ、ほれはほーふーひろはっはんひゃい?」
「ピュア、食べ物はちゃんと飲み込んでからしゃべりなさい」
「ふぃーふぃー」
「・・・ぽちもネ」
みかどに言われたとおり、ピュアくんとぽちはお菓子をよ~く噛んで、ごっくんと飲み込み、そしてようやく喋り始めた。
「それで、それはどーゆー人だったんだい?」
「きーきー」
ピュアくんが尋ねると、たかしくんがその辺にあった木の棒を手にとり、地面にサラサラと絵を描き始めた。
「えっとね、えっとね、ここがこーでこーで、こんなカンジで・・・」
「うわ~!たかしくん上手上手~!そっくり~!」
「うんうん、さすがピュア島お絵かきコンテストで第1位に輝いたコトだけはあるな」
「きぃきぃ~!」
たかしくんの描く絵に、みんながやんややんやと大騒ぎ。
あまりにみなが騒ぐので、みかどは食器を洗っていた手をとめて、彼らの方へ行き、たかしくんの絵を覗き込んだ。
「どれどれ」
確かに、思っていたよりも上手ではあったが、やはりたかだか知れたもの。
みかどは顔をほころばせたが、しかしすぐにその表情はこわばった。

安定しない線で描かれた人物像は、長い前髪で右目が隠されている。
この特徴だけで、みかどにはその人物が誰かわかるには十分だった。
「とおる、たかし!本当にこの人が海岸にいたのか?」
みかどは突然、切羽つまった口調でとおるくんとたかしくんに尋ねた。
2匹はそんなみかどに少し気おされつつ、答える。
「う、うん。間違いないよねぇ・・・?」
「うん。右目隠してる人なんて、あんま見たコトないし・・・」
みかどは2匹の答を聞き、彼らのであった人物が自分の思っている通りの人だと確信する。そして洗いかけの食器をおいて、ピュア家を飛び出そうとする。
「どこ行くんだ?」
「話は後だ!」
ピュアくんがひきとめるのにもかまわず、みかどは駆け足で出かけていってしまった。
「一体何を焦ってるんだ?」
「きぃー」
取り残されたピュアくんたちは、不思議そうに頭をかしげるコトしかできませんでした。
(よりにもよって、ささらがこの島に来てから来るこたぁねーだろ・・・、いや、ささらが来たから追ってきたのかもしれないが・・・)
みかどは南の森中を足早に駆け回り、くれないを探し続ける。
(何にしても、まずは戦力集めだ。くれないは一体どこに・・・・・・・・・・・・・ん???)
うろうろしている間に、やっと手がかりらしき立て札を見つけた。そこには“南の番人はこちら→”とかいてある。
みかどはかかれてあるとおりの方向へと、向かってみた。
「?」
しかしたどり着いたトコロには、“↑今度はこっち”とかいてある立て札が立っている。
「・・・・はぁあ???」
おかしいなぁと思いつつ、立て札にしたがって、その方向へと向かってみる。
「!!???」
またかい!ってなカンジに、今度は“←さらにあちらへ”とかいてあるではないか!
「どこだ――――ッ!!くれな――――――いッツ!!!」
行く先行く先現れる立て札にしたがってすすみ、かれこれ40分が経過した・・・。
そして行き着いたトコロは・・・
“行き止まり☆”
みかどはゼーゼー息をきらせながら、かなりの怒りを覚えた。
すると、突然、みかどの背後の木から、誰かの気配が!!
不気味な気配を瞬時に感じ取ったみかどは素早く後ろを振り返るが
「なんだ、みかどさんだったんですか」
現れた人物、くれないは立て札に従ってやってきた人物がみかどだとわかると、不気味なオーラを発するのをやめ、つまらなそうな顔をした。
「な・・・、何やってんだおまえ・・・」
くれないの変な登場の仕方に、まだ胸の動機がおさまらないみかど。
しかしくれないはみかどの質問にも答えず、不満そうに“行き止まり☆”の立て札を地面からズボッとぬき、ぶつぶつグチをこぼす。
「まったく、あなたがコレにひっかかっても仕方ないのに・・・」
(じゃあ誰ひっかけるツモリだったんだよ・・・)
ソレは、読者の皆さんがご存知です(第5話(1)参照)
まー気ィ取り直して、やっとのコトで見つかったくれない。みかどは目的を果たそうと試みた。
「それはともかくだな、くれない。突然だが、今日から俺はオマエの友達だ」
――――間―――――。
「がはぁッ!!!」
「だ――――――――ッツ!!!」
みかどのその言葉を聞くと、くれないはいきなり恒例の吐血。
「だ、大丈夫か!本当によく吐くな、おまえ!」
「げふっ・・・だ、大丈夫です・・・・、あ、あまりにウレシくて・・・がふっ!!」
まさか「友達になってやる」の一言で吐血されるとは思わなかったので、みかどはまたもびびってしまった。1年この不思議な島にいても、慣れないコトはまだまだある。
それに、みかどがこんなコトをいったのも、当然本当に友達になろうと思っていったコトではない。
あおいとひかりはともかく、きのえとくれないは青の一族であるみかどがこの島にすむコトに対し、否定的だ。
正直に「力を貸して欲しい」といったトコロで、貸してくれるハズもなかっただろう。
ってワケで、こんな心にもないうそをついてみたりした。
「う、生まれて初めての友達ですよ~!吐血だってしたくなります!!」
「あー、そうだね」
感涙の涙を流し、口元にうっすらと血をにじませるくれないに、少々ウンザリしながらみかどは同意した。
「ってワケで、協力してほしい」
くれないのハートを掴んだ!と確信すると、みかどはあっさり本題に入った。
「なんだって協力しますよ!!」
「頼もしいな。実はな、俺の叔父・・・・、青の一族の男がついさっき、この島に上陸した」
「何ですって?」
それを聞くと、くれないは表情を険しくする。
「たぶん俺を日本へ連れ戻しに来たんだと思う。でも、俺1人の力じゃ到底敵う相手じゃねぇ。番人の中で一番強い、オマエの力が必要なんだ・・・・・・・・・・・って、コラ」
くれないは途中までみかどの話をちゃんと聞いていたが、やってきた男の強さを聞くと、ふろしきに荷物一式つめこんでコッソリ逃げ出そうとしてるではないか!
「どこへ行く気だぁあああッツ!!!」
「地の果てまで逃げますッツ!!」
「バカヤロー!逃げてどーする!!」
「だってみかどさんでも敵わないんでしょー!!」
強いクセに、無駄な抵抗はしないあたりかしこいのか卑怯なのか・・・。
しかしみかどはすぐにくれないを操れる魔法の言葉を発した。
「助けてくれよ、友達だろ?」

くれないを説得するのは十分でした。
「仕方ないですネ~。友達ですしィ☆」
友達いない歴19年の吐血男は、うれしはずかしといわんばかりに頬を赤く染めあげた。
みかどはくれないを味方に引き入れるための手段とは言えど、「友達」発言してしまったコトに少し不安を覚える。
「でも、私たち二人だけで勝ち目はあるんですか?」
ふと、マジメ顔に戻ったくれないがみかどに尋ねた。
「う~~~~~ん・・・・」
みかどは自身なさげに腕を組み、うなり声をあげる。いい作戦がないかと考えた末、ひらめいたのは・・・
「・・・・あいつらにも頼むか」
みかどはため息混じりに呟いた。
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