【第1部】第7話 青の一族

「ヴァーストの弟・・・ってコトは、おまえ、兄ちゃんのおじさんにあたるのか!」
「そうだよ」

 こちらはピュア家。
 ボールを拾ってくれた突然の来訪者、ビリーヴと、ピュアくん&ぽちはすっかり仲良しさんになっていた。

「それにしても、ここは不思議な島だね。動物が人間の言葉を話すなんて」
「そうか?」
「うん。大根に道案内をされたときは、本当にビックリしたよ」
「だいちゃんに会ったのか」
「確かそんな名前だったかな。ピュアくんの家を探しているときに、親切に声をかけてくれたんだ」
 間違いなく、大根のだいちゃんのコトであろう。

「さすが正義の味方だなー」
「きぃきぃ♪」
 すると、ピュアくんはふと、何かに気付いたようにビリーヴに言った。

「・・・ビリーヴはヴァーストの弟なんだよな?」
「そうだよ」
 ピュアくんは少しだけ、表情を固くした(正確には眉をしかめた)

「じゃあ、バロック団っていうのに入ってるのか?」
「いや、あまり団体行動は好かないからね、入ってるわけではないけれど・・・。まぁ、総帥の弟だから、関りがないとはいいきれないな」
 相変わらず、ビリーヴは優しい口調で答えてくれた。
 ピュアくんもぽちも、その言葉に安心したらしく、ビリーヴに近づくと、彼の腕のあたりをぽんっと叩いていった。

「でもおまえ、今まで来たバロック団員みたいに、悪そうなヤツじゃないな」
 ビリーヴはピュアくんに静かに微笑みかけた。
「ありがとう」
「いーえ」
 そしてピュアくんは、ビリーヴに対する警戒心を一切なくした。

 ふとしくんときよてるくんとの待ち合わせ場所は、地底王国。
 ささらは東の森へ行き、地底王国の中へと入っていった。
 入ってすぐ、気になったのは

 ぐぉ~・・・ ぐぉ~~・・・・・・・

 という、異様にでかいいびきの音。
 ふと、音のほうに視線をやると、そこには大きな大きなひかりさんがいびきを立てて眠っておりました。

「ひかりさんってば、こんな真昼間から爆睡しちゃって・・・」
 アンタ人のこといえないでしょ(第6話参照)
 とりあえず、ひかりを起こさないよう、そっとその場を去ろうとしたとき、誰かに声を駆けられた。
「やぁ、ささらくんじゃないか!」
(げっ!)
 声のほうを振り向いたささらは、思わず心の中で本音をもらす。
 声をかけてきたのはあの正義の味方(肩書きだけ)、大根のだいちゃんだったのだ。

「だ、だいちゃん・・・。どうしたのこんなところで・・・」
 ささらはとりあえず、軽くご挨拶をしてみる。
「いやぁ、ひかりくんのいびきがうるさくて、地底王国にいるみんなが困っていてね。だから人気のないここまで、転がしてやっんたんだ」

 人助けを引き受けても、いつも裏切るか、見当違いな解決策しかしないだいちゃんが、めずらしくためになるコトをしている。
 しかし、お金のないピュア島で何故か莫大な報酬を請求するだいちゃんだ。ただですますはずはないと思い、ささらは尋ねた。
「そっかぁ、ご苦労さま。でも、またみんなから報酬請求するんでしょ?」
「いや、今日はボランティア精神に満ち溢れた気分なんだ。そんな真似はしないよ」

 だいちゃんはそういって、マントをひらりとなびかせた。
(へぇ、だいちゃんにもそんな日があるなんて)
 ささらがクスっと微笑んだトキ、なびかせたマントから、何かがドサッと落ちてきた。

 札束だった-。

「ちょちょちょちょっと、だいちゃん!!何ソレ!?」
 だいちゃんは落とした物に気付くと、あわててそれを拾い上げ、再びふところにしまった。
「い、いや、なんでもないんだ。気にするな」
「気にするわよ!お金のないピュア島で、なんで札束なんかもってるの!?しかも一万円の札束!!」
 だいちゃんは大きなため息をつくと、キリっとした瞳をささらにむけた。
「仕方ない・・・。みんなには秘密だぞ」

 そしてしぶしぶ話を始める。

「実は先ほど、見慣れない男が森の中を歩いていて、道に迷っていたんだ。だから道案内してやって、報酬を請求したらめずらしく払ってくれたんだ。ようやく常識のわかる人にめぐり合えた気分だったさ」
 だいちゃんの話を聞いて、ささらは妙に思う。

 見慣れない男・・・?
 しかも、一万円の札束を持っているというコトは、日本人であるということ・・・。
(もしかして、新たなバロック団員がみかどさんを狙ってやってきたんじゃ・・・!!)
 ささらは突然焦りを感じ、だいちゃんに尋ねた。
「だいちゃん!その男の人、どんな人だった!?」

「どんなって・・・、そうだな、身なりや彼のしぐさからして、そんじょそこらの庶民でないことは見てすぐにわかったよ。請求額以上の報酬を快く与えてくれたりしたし、きっとかなり大金持ちの立派な身分の人間だと思う。もしかしたら観光している最中に、ひょっこりこのピュア島にやってきてしまったんじゃないかな」
 だいちゃんの話を聞いて、ささらなりにその人物の解釈をしてみる。

(そうよネ・・・。確かに、バロック団員ならあんな巨額のお金、持ってくる必要はないし、確かにここって地図には載ってないケド、決してたどり着けないような場所でもないし、・・・なおかつすごく身分の高そうな人ってコトは、本当に観光でここに来たってコトもあり得る・・・)

 真剣な顔で考え込むささらに、だいちゃんは声をかけた。
「どうしたんだい?ささらくん」

 ささらは考えをまとめ、そしてだいちゃんににっこり微笑んでいった。
「ううん、何でもない。あたしの考えすぎだったみたいだから」
 そしてだいちゃんに軽く挨拶をすると、ふとしくんときよてるくんとの待ち合わせ場所へと向かっていった。

 ・・・って、それどう考えてもビリーヴじゃないですか!
 みかどさんが散々苦労してるトキに、この小娘は・・・。

 ところ戻ってピュア家-。
 ピュアくんとぽちとビリーヴは、家の外にある大きな丸太の上に腰掛けて仲良くお話していた。

「なぁなぁ、ビリーヴ。その右目、どうしたんだ?」
 ピュアくんは長い前髪に隠された、ビリーヴの右目を指差す。
「ケガでもしたのか?」
 ビリーヴは突然、自分の右目のことにふれられ、少しだけ昔を思い出した。

 ・・・少しだけ、遠い昔に死んでしまった、親友を思い出した。
「・・・まぁ、そんなところだよ」
「大丈夫なのか?」
「古傷だからね。もう大丈・・・」
 ビリーヴは言葉を途中で切った。

 ピュアくんもちょうど同じくらいのトキに、少しだけ顔をこわばらせた。

 殺気

 それを感じた瞬間、2人は座っていた丸太から素早く退く。

 ザシュッ!!!

 二人が退いた直後、彼らのいたあたりに大量の水が、ものすごい速さのために刃のような鋭さで襲ってきた。
「水・・・」
 ピュアくんが呟く。
 そしてビリーヴは人の気配のする、自分のを背後を振り返った。

「くっそ~、外した!」
 ビリーヴの視界に入って来たのは、まだ16、7の幼い少年。
 木の上から身軽に飛び降り、着地したトコロだった。

「外したんじゃなくて、よけられたんだろ。どっちにしてもカッコ悪いケド」
 着地してきたあおいに対し、ズビッと勢いよく指差し、きついコトいってくるピュアくん。
 しかも図星なだけに何か恥ずかしくて
「う、うるさいな!ピュアくんは引っ込んでてよ!」
といったが最後。

「誰に向かって口聞いてるんだ、おまえ!」
 ピュアくんはぽちに命令して、あおいちゃんの頭をがぶりとかませてしまいました。
「いだだだだだだだだだ―――――ッ!!ぽち離せ――――ッ!!」
 ビリーヴは、その光景を無表情で眺めていた(バカにした眼差しを向けてるとも言う)
 何かワケわからん間に自分を襲ってきた少年は、ぽちに痛めつけられてしまっている。
 さて、ここはどうすれば良いものか・・・と、考えている間に、わずかな隙が生じた。

「!!」

 ビリーヴの首に突然、蔦でできた鞭が絡みつく。
「何やってんだ、あおい!」
 ビリーヴを捕らえたのはきのえだった。
「き、きのえくん!」

 ぽちに頭をかじられて、頭から血を流す彼を見て、きのえは思わず吹き出した。
「頭から血ィ流して・・・、やっぱ兄弟だな」

 これが傷ついた親友に投げかける言葉か!?

 あおいちゃんにとって最大のコンプレックス(兄)を、こうもあっさりと!!
 あおいちゃんのガラスのハートは打ち砕かれた・・・。
 ついでに、兄(くれない)は待機している草むらの陰で喜んでいた。

「おい!お前ら!!」
 すると突然、ピュアくんが大きな声できのえとあおいに向かって怒鳴りつけた。
「どーしてビリーヴを襲うんだ?別に悪いコトしてないだろ」
 きのえとあおいの意識がピュアくんに向く。

 すると、今度はビリーヴがその隙にどこからかハサミを取り出し、きのえの蔦の鞭をちょきんっと切ってしまった。
「あぁ!てめー、卑怯だぞ!!」
 きのえはふたたび新しい鞭をだし、なおかつトムとボブまで呼び寄せ、ビリーヴを捕獲しようとする。
 しかしビリーヴは優雅な物腰で、黄金に輝く長髪をなびかせ颯爽と逃げるので、なかなかつかまらない。

 一方、ピュアくんとあおいは・・・。
「何言ってるんだよピュアくん!あいつは僕らの敵だろ!?」
「でも、いいヤツだったぞ」
 それはこの1時間近く、色々話してきたピュアくんが実感したコト。
「そんな、ピュアくんは知らないだろうケド、あいつは16年前、僕らの島を襲った青の一族なんだよ!?」
「その中にビリーヴがいたとは限らない」
 ピュアくんは決して自分の意見を変えようとはしなかった。

「とにかく、あおいたちがビリーヴに手を出すなら、ぼくが許さないぞ」
 かといって、実際16年前の確執を味わったあおいとしても、折れるワケにはいかなかった。
「そんなコトいってる場合じゃ・・・」

「えーい、このわからずや――――――――――――ッツ!!!」

 でも、キレるのはピュアくんの方が早かった。
 ピュアくんは右手に握りこぶしをつくり、その拳をきのえとあおい目掛けて一気に打ち込んだ。

「どわぁああああ―――――――――――ッツ!!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キラリンッ☆

 きのえとあおいは遥か遠方へすっ飛んでいってしまった・・・・。

「あらまぁ、よく飛びましたねー」
 きのえとあおいのすっ飛んでった方向を眺めつつ、くれないがのん気な口調でいう。
「あんの役立たずども・・・」
 みかどはふかいふか~~~いため息をついた。

「それで・・・、いつまで隠れてるつもりだ?みかど」
「!!」

 バレていた-。
 木陰に隠れ、待機していたみかどとくれないは、突然名前を呼ばれたコトに動揺し、思わず目を合わせる。

「(小声)バッ・・・バレてる・・・!」
「(小声)ど・・・どーしましょ・・・!」
「(小声)とりあえず、出るか・・・?」
「(小声)・・・・出た方がいいのでは・・・?」
 なんとも情けないやりとりの結果、みかどは6年ぶりに会う、叔父の前に姿を現すコトを決意する。

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