木陰から現れてきたのは、4年ぶりに見る甥の姿。
4年前、みかどがまだ15歳のとき、師として彼の修業に付き合って以来だろうか。
幼い頃、自分を慕ってくれていた甥の成長した姿には、親心と言わずとも、それに似た感情を抱いてしまう。
ビリーヴは静かに微笑んで、みかどにいった。
「久しぶりだな、みかど。随分と、たくましくなったな」
奇妙なものだ。
大好きだった叔父と、幼い頃、仲の良かった叔父と、こんな形で対面しなくてはいけないなんて。
それもこれも、全てはあの忌まわしい、ヴァーストのせい。
バロック団総帥でみかどの実の父親、ビリーヴの実の兄。
「おじさん、親父に言われて来たの?」
「そうだ。お前をヴァーストの所へ連れて帰る」
この人だけは、自分の味方だと思っていたのに。
全ての事情を知っている、ビリーヴは自分の味方だと思っていたのに。
みかどは顔に出さずとも、強いショックを受ける。
母さんが死んだと同時に生まれた末弟、みこと。
その可愛い弟を幽閉した親父の元へ帰れと?
「いやだといったら・・・?」
「力ずくでも」
みかどは構えた。
「くれない!」
そして仲間の名を呼ぶ。
くれないは素早く草むらから飛び出すと、片手に大きな炎を作り出す。
その炎は、くれないがきのえやあおいとは比べ物にならない力を秘めていることを表している。
ビリーヴはその炎が放たれる間、瞬時に思った。
「紅炎華!」
「眼魔砲!」
くれないとみかどの必殺技がビリーヴに向かい、そして大きな爆発が起こる。
あたりは大きな煙が巻き起こり、ビリーヴの姿は見えなくなっていた。
「やりましたか?」
煙の方を見つめ、くれないがいう。
「いや、まだだ。気を抜くな」
みかども煙のほうを見つめ、くれないにいった。
そして、煙がはれ、ビリーヴの姿が徐々に見え始める。
そのシルエットからして、ビリーヴが無傷だということはよくわかった。
みかどは再び、眼魔砲を撃つ構えをした。
しかし、すぐにその手はとめられた。
「!!」
完全に姿を表したビリーヴは、みかどとくれないの放った技を、右肩にかかえていたのだ。
「お、俺たちの技を・・・」
「かかかかついでる!?」

自分たちも放つ前、かなりの負担がかかる技を、ビリーヴは軽々と持っているのだ。
ビリーヴは冷めた目でみかどとくれないを見、ぽいっとその技を彼らにそっくり返してやった。
ちゅど――――――ん!!
「だは―――――――――ッ!!!」
・・・・・・合掌。
倒れこんだみかどの元に、ビリーヴが近寄る。
「覚悟はできているな」
冷たい目でみかどを見下ろし、静かに言い放つ。
みかどは顔をしかめた。
すると
「!!」
みかどに意識が向いていたビリーヴの隙を見て、くれないが片手に炎をかかえ、襲い掛かってきた。
油断していたビリーヴは、くれないの突然のふいうちにどうすることもできない。
(とらえた!)
くれないは思った。

そして再び、大きな炎のかたまりをビリーヴ目掛けて放とうと・・・・
「がふッ!!!」
したトコで、吐血してしまった。
「げっほげほ!!!」
くれないはなおも苦しそうに吐血している。
久しぶりの戦闘で無理がたたってしまったのか・・・。
「えーい!本ッ当に役立たずどもめー!!」
みかどさん!病弱な彼にそんなコトいわないで!!
戦いが一段落すんで、くれないはピュア家で保護されました。
ピュアくんはくれないを自分の家に運んだ後、こっそり家の中からみかどとビリーヴの様子を覗った。
ピュアくんはみかどもビリーヴも大好きだから、さっきみたいに戦いあっているのを見るのは正直イヤだった。
戦いはもうしないようだが、それでもぎすぎすした雰囲気が消えているワケではない。
それに、みかどの事情も気になっていた。
みかどが大切にしていた弟が、父親に幽閉された話は知っていたが、それ以上のコトは突っ込まなかった。
わざと関心のないふりを装ってはいたが、それは話したくないみかどの気持ちを察してのこと。
内心は興味津々だったのだ。
「みかど、4年前、共に修行をしたときに、私が言った言葉を覚えているか」
ビリーヴは自分に背をむけるみかどに、静かに話し掛けた。
(・・・忘れるもんか・・・)
今でも、ビリーヴの声とともに甦るその言葉。
-私やヴァースト、誰よりも強くなり、そして一族の運命を救ってくれ-
一族の中で、唯一の黒髪。
一族の中で、唯一秘石眼を持たぬ男。
それがみかど。
そのコトに対し、劣等感を抱いていたみかど。
-秘石眼を持たないから、お前は青の力にとらわれることはないんだ-
コントロールできないくらい、大きな力を持つ秘石眼を持つコトがどんなに恐ろしいコトかを教えられた。
片目だけ秘石眼なのが当たり前な一族の中で、唯一両目が秘石眼である、父親ヴァーストの力のすごさを知ったのも、このときだった。
その両目の秘石眼があるから、ヴァーストは世界一の殺し屋集団、バロック団の総帥なのだ。
その力をコントロールできるが故に、たくさんの人を殺め、世界を征服するコトを企む。
-青の一族は、世界を征服するために、何百年も前にピュア島を抜け出した。-
その意志をついでいるヴァーストも、青の一族にとらわれているも同然だった。
-私たち青の一族は、間違っている-
-だからこそ、秘石眼を持たないおまえに、私たちを一族の運命から救ってほしい-
「何故ヴァーストから逃げる」
ビリーヴの言葉に、みかどは答えた。
「俺は・・・、俺はみことに会いたいんだ・・・」
みかどの気持ちを聞いても、ビリーヴは口調を変えず、淡々と話した。
「みかど。みことのことはあきらめろ。私と一緒に、ヴァーストのところへ戻ろう」
みかどはビリーヴの方を振り返り、大きな声で怒鳴った。
「何でだよ!!何で親父もおじさんもみことの存在を無視するんだよ!みことが何かしたのか!?何で隠すんだよ!!!」
ショックだった。
何故、事情を知っているおじまでもが、こんなことをいうのか。
みかどは怒りに肩を震わせた。
ビリーヴはそっと、目を伏せる。
そして一通り考えをまとめると、静かに話し始めた。
「みかど・・・。おまえに、わたしが右目をえぐった理由は話してなかったな・・・」
みかどは突然のビリーヴの言葉に、少しだけ、冷静さを取り戻す。
「私の右目は秘石眼だったんだ」
ビリーヴの脳裏に浮かぶのは、1人の少年。
自分がバロック団に疑問を抱くようになったのも、この右目がなくなったのも、全てあの少年がかかわったから。
22年前であった、みかどそっくりの少年、レン。
ビリーヴはふと、目を伏せ、そして言った。
「続きは番外編の「アイ~I・eye・愛~」を読んでくれ。リンクを貼っておこう」
「ちょちょちょちょっと、おじさん!!!」
これからシリアス話が始ると思って期待してたのに!!
しかし、そんなみかどにビリーヴはギラリと一睨み。
「うるさい。ページが足りんのだ」
・・・事実なので、ここはビリーヴ様に従いましょう。
「前にも話したな。秘石眼は普通、片目だけだが、それだけでもその威力は大きすぎて、制御は難しい」
話のテンポはシリアスに戻ります。
「両目とも秘石眼で、その力をコントロールできるのは、ヴァーストだけだ」
みかどはまっすぐビリーヴを見て、一言言い放った。
「それが・・・、みことと何の関係があるんだよ」
「兄貴もいずれ、おまえに話す気でいたらしいが・・・」
みかどはビリーヴの言葉を待つ。
家の中からこっそり聞いていたピュアくんも、意識をビリーヴの方へ集中させた。
「みことは、両目とも秘石眼だ」
みかどは目を見開いた。
「みことの力が暴走すれば多くの犠牲者が出るだろう。だからヴァーストはみことを幽閉したんだ」
みかどはその場に立ち尽くす。

ビリーヴはみかどの目をみて尋ねた。
「みかど・・・。私と一緒に、日本へ帰るか?」
ピュアくんはみかどの答えを聞かず、彼らの見える窓から目を離した。
そして壁にとん、と背中をつき、そのまま力なく床に座り込んだ。
「きぃ」
ぽちがピュアくんの心配をして、彼の様子を覗うように肩に乗る。
ピュアくんは何も言わず、そっとぽちの頭を撫でた。
「じゃあね、ばいばーい」
「ばいばーい」
すっかり日も沈んできた頃。
ささらは、きよてるくんとふとしくんとの遊ぶ約束をすませ、帰路についていた。
「はぁ、楽しかった。また明日も遊ぼっと」
満足そうな顔でそう言うささら。
「おなかもすいてきたし、今日の夕飯は何かなー?」
そんなコトを呟きながら、ピュア家の方へ向かう。
すると、木を間に挟んで、誰かとすれ違った。
ここは森の中だから、木や草にジャマされて、すれ違った相手の姿がよく見えないなんてよくあるコト。
ささらは木ごしにすれ違った人物の姿を確認しようと、後ろを振り返る。
同じように、ささらとすれ違った人物も、彼女の方を振り返った。
やや強い風が、2人の間を通り抜ける。

ささらはすれ違った男の姿を見て、驚きのあまり、しばらく声が出なかった。
そしてビリーヴは何も言わずにささらを見つめる。
どうして
何で
何故
何故ここにいるの?
「・・・・・・お父様・・・・・・?」
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