目覚めた。
影に捕われていた光が、その束縛から逃れ、今、自由を手にした。
物語が始まる。
みことの眼魔砲をくらったみかどを、煙が包み込んだ。
みことも、ビリーヴも、そしてヴァーストも、みかどは助からないと思った。
しかし煙がはれてくると、座り込んでいるみかどの姿が見える。
意識があるのだろうか。
誰よりも先に、ヴァーストがみかどの方へかけよった。
手をのばしかけて、そしてその手を止める。
(みかどじゃない・・・)
かすかに見えるのは、ブロンドの長い髪と青い瞳。
みかどの黒髪ではない。
そしてその青く光る右目は、ヴァーストの両の秘石眼と共鳴していた。
みかどは両目ともに秘石眼ではない。
では、ヴァーストの目の前でうずくまるこの男は何者。
煙が完全にはれ、その男の姿があらわになる。
ビリーヴもみことも、突然現われた人物にとまどいを隠せない。
一体どこから現れたのだ。
一体、誰なのか。
そしてみかどはどこへ行ってしまったのだ。
けれど、彼らの秘石眼も、その男の右目の秘石眼と共鳴し、うずいていた。
青の一族であるコトは、確かなようだ。
「誰だ・・・?」
誰も言葉を発さない中、ようやく、ヴァーストが口を開いた。
男はゆっくりとヴァーストの方を向くと、
「みかど」
こう答える。
男は立ち上がり、血まみれの腹を抑える。
手にべっとりと付着した赤い血を見た。
けれど、痛みは感じない。
これは自分の流した血ではないから。
今はもういない、黒髪のみかどが流した血だから。
その事実を身をもって知り、男は満足そうに微笑んだ。
そして顔をあげ、ヴァーストに向かい、はっきりとした声で言う。
「俺が本当のみかどだ!」
「うがらーーーーーッツ!!!」
「だー!また暴走し始めたーッツ!!」
(3)のラストで突然暴走をやめたささらだったが、それもつかの間。
1分もたたないうちに、再び暴走モードに突入してしまった。
そんでもって振り回されるは4人の番人(リーダーは傍観)
「ワシにも感じたわい。遠い海の向こうで、新たな力が解放されたコトを」
向こうのさわぎは相変わらずナチュラルに無視して、話を続けるガマ仙人とピュアくん。
「それも、強力な青の力じゃ」
ガマ仙人はピュアくんの目を見た。
「ひとつじゃない」
ピュアくんが言うと、ガマ仙人は深く頷いた。
「兄ちゃんは・・・・」
ピュアくんが尋ねると、ガマ仙人は再び、海の向こうを見つめた。ちゃっかりささらたちは視界に入れないようにして。
「ピュア、青の一族はいよいよこの島に来る。覚悟せいよ」
落ち着いた、それでも威厳ある声で、言われた。
それはピュアくんも覚悟していた。
ただ、答えてもらえなかったみかどの存在だけが、心配だった。
ヴァーストは、とまどいの表情を浮かべる。
そしてこの場から消えてしまった、自分の息子の身を案じた。
「な・・・、みかどは・・・?」
「言ったろう、俺が本当のみかどだ」
彼の言うことが理解できない。
ヴァーストは尋ねる。
「本当の・・・?」
「今までおまえたちがみかどと信じてきた人物が、19年間、俺になりすまし、俺として生きてきた」
「では、みかどは・・・、私が19年間育ててきたあの子は、偽者だというのか?」
「そいういうことだ」
ヴァーストがまだ納得しきれないにも拘らず、白みかどは話を切り上げると、不思議そうな瞳で自分を見つめるみことの方へと向った。
「みこと、お前のおかげだ」
声をかけられたみことは、まだ不思議そうな顔ををして、白みかどを見る。
自分と同じ金髪、自分の両目と共鳴する右目。
自分と同じものを、この男が持っていることはわかった。
みことの警戒心が、薄れる。
「おまえがあの偽者を追っ払ってくれたおかげさ」
白みかどはかがんで静かに笑い、みことの頭をそっと撫でた。
みことはビックリして、白みかどを見上げる。
今まで何をしても誰も気にかけてくれなかったのに。
何をしても、誰も認めてくれなかったのに。
自分を褒めてくれたコトに驚いた。
自分のしたことを肯定してくれたコトに驚き、そしてウレシくなって、みことは白みかどに抱きついた。
「お兄ちゃん!」
そうしてウレシそうににっこり微笑む。
みことは、白みかどを認めた。
「・・・信じられない。本当に私の息子なのか・・・?」
その光景を見つめていたヴァーストが、口を開いた。
白みかどは再び、ヴァーストの方を向いた。
「この右目がおまえらの秘石眼と共鳴したのを感じただろう」
するどい目で見つめられ、ヴァーストはわずかにひるんだ。
にぶく光る男の右目に、強い力がひめられていることを察したからだ。
「安心しな、俺は本物だ」
そして白みかどはみことをひょいと肩にかつぎあげた。
「みこと、おまえの力は役に立ちそうだ。連れてってやる」
「わーい」
そんな会話を交わしながら、彼らはヴァースト、そしてビリーヴの横を通り過ぎる。
すれ違った瞬間、ビリーヴは感じた。
(レンの面影が消えた・・・)
遠い昔に死んでしまった友人、レンにそっくりだった黒髪のみかど。
しかし、自ら本物と名乗るみかどは、髪の色も目の色も違えば、レンや黒髪のみかどが持っていた雰囲気すらもっていなかった。
「どこへ行く」
ヴァーストがエレベーターの方へと向う、白みかどをひきとめる。
「ピュア島へ」
白みかどは立ち止まり、振り返って答えた。
「赤い秘石を奪いに」
野望を秘めた、青い瞳をこちらに向けて。
その言葉に、ヴァーストもビリーヴも驚く。
「そんなことをして、どうするつもりだ」
「あんたの望みどおり、長男の俺が時期総帥になってやろうってことさ」
確かにそれを望んでいたが、それは黒髪のみかどに望んだこと。
白みかどは困惑するヴァーストを見つめ、ニヤリと笑った。
「赤い秘石と青い秘石を手に入れた者は、この世界の覇王になれる。あんたがいつまでたってもかなえられないその野望も、俺が叶えてやる」
「!」
ヴァーストの表情からとまどいや困惑は消える。
厳しい表情で白みかどをにらみつけた。
「そして、16年前の襲撃で運良く生き残った赤の一族と、あの島にいる全てのヤツらを殺す」
それを聞くと、今度はビリーヴが表情を険しくする。
白みかどは二人の反応に満足したように笑った。
そして身を翻し、その場を去ろうとする。
「待て!勝手な真似はさせんぞ!」
ヴァーストが声をあらげた。
しかし、白みかどの反応はいたって落ち着いたもの。
「戦うツモリか、父さん」
その落ち着きと自信はどこからくるのか。
「俺たち2人と」
自分と弟の持つ、青の一族の力があるから。
ヴァーストは一歩も動かない、いや、動けない。
いくら青の一族、そして世界の頂点に立つ男といえど、秘石眼を持つ人間2人を相手にするのは、無茶だ。
白みかどは再び歩き始めた。
「おとなしくまってるんだな」
白みかどの肩に座っているみことも、こちらを振り返り、にっこり笑って手を振った。
「ばいばーい、パパv」
ヴァーストにもビリーヴにも、二人をひきとめるコトは、もうできなかった。
「兄さん・・・、あの男は本当にみかどなのか・・・?」
白みかどが去った後、ビリーヴがヴァーストに尋ねる。
「・・・わからん」
表情を険しくしたまま、ヴァーストが答える。
「しかし、あの秘石眼、青の一族であるコトは確かなようだ」
再び沈黙が訪れる。
突然に多くのコトがのしかかってきた。
みことの逃亡。
白みかどの出現。
そして、みかどの失踪。
バロック団の総帥としても、大きな力を持つ白みかどとみことが好き勝手するコトを、とめなければならない。
けれど、1人の父親として何よりも気になるのは・・・・
「親父」
・・・気になるのは・・・・
「・・・・・・!」
振り返った瞬間、視界に入るのは、先ほどまでいなかったハズの、自分の息子。
みかどはそこに立っていた。
・・・とまどいの表情を浮かべて・・・。
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