【第1部】第9話 光と影

 目覚めた。
 影に捕われていた光が、その束縛から逃れ、今、自由を手にした。

 物語が始まる。

 みことの眼魔砲をくらったみかどを、煙が包み込んだ。
 みことも、ビリーヴも、そしてヴァーストも、みかどは助からないと思った。
 しかし煙がはれてくると、座り込んでいるみかどの姿が見える。
 意識があるのだろうか。
 誰よりも先に、ヴァーストがみかどの方へかけよった。
 手をのばしかけて、そしてその手を止める。

(みかどじゃない・・・)

 かすかに見えるのは、ブロンドの長い髪と青い瞳。
 みかどの黒髪ではない。
 そしてその青く光る右目は、ヴァーストの両の秘石眼と共鳴していた。
 みかどは両目ともに秘石眼ではない。

 では、ヴァーストの目の前でうずくまるこの男は何者。

 煙が完全にはれ、その男の姿があらわになる。
 ビリーヴもみことも、突然現われた人物にとまどいを隠せない。
 一体どこから現れたのだ。
 一体、誰なのか。
 そしてみかどはどこへ行ってしまったのだ。
 けれど、彼らの秘石眼も、その男の右目の秘石眼と共鳴し、うずいていた。
 青の一族であるコトは、確かなようだ。

「誰だ・・・?」
 誰も言葉を発さない中、ようやく、ヴァーストが口を開いた。
 男はゆっくりとヴァーストの方を向くと、

「みかど」

 こう答える。

 男は立ち上がり、血まみれの腹を抑える。
 手にべっとりと付着した赤い血を見た。
 けれど、痛みは感じない。

 これは自分の流した血ではないから。
 今はもういない、黒髪のみかどが流した血だから。

 その事実を身をもって知り、男は満足そうに微笑んだ。
 そして顔をあげ、ヴァーストに向かい、はっきりとした声で言う。

「俺が本当のみかどだ!」

「うがらーーーーーッツ!!!」
「だー!また暴走し始めたーッツ!!」
 (3)のラストで突然暴走をやめたささらだったが、それもつかの間。
 1分もたたないうちに、再び暴走モードに突入してしまった。
 そんでもって振り回されるは4人の番人(リーダーは傍観)

「ワシにも感じたわい。遠い海の向こうで、新たな力が解放されたコトを」
 向こうのさわぎは相変わらずナチュラルに無視して、話を続けるガマ仙人とピュアくん。
「それも、強力な青の力じゃ」
 ガマ仙人はピュアくんの目を見た。
「ひとつじゃない」
 ピュアくんが言うと、ガマ仙人は深く頷いた。

「兄ちゃんは・・・・」
 ピュアくんが尋ねると、ガマ仙人は再び、海の向こうを見つめた。ちゃっかりささらたちは視界に入れないようにして。
「ピュア、青の一族はいよいよこの島に来る。覚悟せいよ」
 落ち着いた、それでも威厳ある声で、言われた。
 それはピュアくんも覚悟していた。

 ただ、答えてもらえなかったみかどの存在だけが、心配だった。

 ヴァーストは、とまどいの表情を浮かべる。
 そしてこの場から消えてしまった、自分の息子の身を案じた。
「な・・・、みかどは・・・?」
「言ったろう、俺が本当のみかどだ」
 彼の言うことが理解できない。
 ヴァーストは尋ねる。
「本当の・・・?」
「今までおまえたちがみかどと信じてきた人物が、19年間、俺になりすまし、俺として生きてきた」
「では、みかどは・・・、私が19年間育ててきたあの子は、偽者だというのか?」
「そいういうことだ」

 ヴァーストがまだ納得しきれないにも拘らず、白みかどは話を切り上げると、不思議そうな瞳で自分を見つめるみことの方へと向った。
「みこと、お前のおかげだ」
 声をかけられたみことは、まだ不思議そうな顔ををして、白みかどを見る。
 自分と同じ金髪、自分の両目と共鳴する右目。
 自分と同じものを、この男が持っていることはわかった。
 みことの警戒心が、薄れる。

「おまえがあの偽者を追っ払ってくれたおかげさ」
 白みかどはかがんで静かに笑い、みことの頭をそっと撫でた。

 みことはビックリして、白みかどを見上げる。
 今まで何をしても誰も気にかけてくれなかったのに。
 何をしても、誰も認めてくれなかったのに。
 自分を褒めてくれたコトに驚いた。
 自分のしたことを肯定してくれたコトに驚き、そしてウレシくなって、みことは白みかどに抱きついた。
「お兄ちゃん!」
 そうしてウレシそうににっこり微笑む。

 みことは、白みかどを認めた。

「・・・信じられない。本当に私の息子なのか・・・?」
 その光景を見つめていたヴァーストが、口を開いた。
 白みかどは再び、ヴァーストの方を向いた。
「この右目がおまえらの秘石眼と共鳴したのを感じただろう」
 するどい目で見つめられ、ヴァーストはわずかにひるんだ。
 にぶく光る男の右目に、強い力がひめられていることを察したからだ。
「安心しな、俺は本物だ」

 そして白みかどはみことをひょいと肩にかつぎあげた。
「みこと、おまえの力は役に立ちそうだ。連れてってやる」
「わーい」
 そんな会話を交わしながら、彼らはヴァースト、そしてビリーヴの横を通り過ぎる。

 すれ違った瞬間、ビリーヴは感じた。
(レンの面影が消えた・・・)
 遠い昔に死んでしまった友人、レンにそっくりだった黒髪のみかど。
 しかし、自ら本物と名乗るみかどは、髪の色も目の色も違えば、レンや黒髪のみかどが持っていた雰囲気すらもっていなかった。

「どこへ行く」
 ヴァーストがエレベーターの方へと向う、白みかどをひきとめる。
「ピュア島へ」
 白みかどは立ち止まり、振り返って答えた。
「赤い秘石を奪いに」
 野望を秘めた、青い瞳をこちらに向けて。

 その言葉に、ヴァーストもビリーヴも驚く。
「そんなことをして、どうするつもりだ」
「あんたの望みどおり、長男の俺が時期総帥になってやろうってことさ」
 確かにそれを望んでいたが、それは黒髪のみかどに望んだこと。
 白みかどは困惑するヴァーストを見つめ、ニヤリと笑った。
「赤い秘石と青い秘石を手に入れた者は、この世界の覇王になれる。あんたがいつまでたってもかなえられないその野望も、俺が叶えてやる」
「!」
 ヴァーストの表情からとまどいや困惑は消える。
 厳しい表情で白みかどをにらみつけた。
「そして、16年前の襲撃で運良く生き残った赤の一族と、あの島にいる全てのヤツらを殺す」
 それを聞くと、今度はビリーヴが表情を険しくする。
 白みかどは二人の反応に満足したように笑った。
 そして身を翻し、その場を去ろうとする。

「待て!勝手な真似はさせんぞ!」
 ヴァーストが声をあらげた。
 しかし、白みかどの反応はいたって落ち着いたもの。
「戦うツモリか、父さん」
 その落ち着きと自信はどこからくるのか。
「俺たち2人と」
 自分と弟の持つ、青の一族の力があるから。

 ヴァーストは一歩も動かない、いや、動けない。
 いくら青の一族、そして世界の頂点に立つ男といえど、秘石眼を持つ人間2人を相手にするのは、無茶だ。

 白みかどは再び歩き始めた。
「おとなしくまってるんだな」
 白みかどの肩に座っているみことも、こちらを振り返り、にっこり笑って手を振った。
「ばいばーい、パパv」
 ヴァーストにもビリーヴにも、二人をひきとめるコトは、もうできなかった。

「兄さん・・・、あの男は本当にみかどなのか・・・?」
 白みかどが去った後、ビリーヴがヴァーストに尋ねる。
「・・・わからん」
 表情を険しくしたまま、ヴァーストが答える。
「しかし、あの秘石眼、青の一族であるコトは確かなようだ」
 再び沈黙が訪れる。

 突然に多くのコトがのしかかってきた。
 みことの逃亡。
 白みかどの出現。
 そして、みかどの失踪。

 バロック団の総帥としても、大きな力を持つ白みかどとみことが好き勝手するコトを、とめなければならない。
 けれど、1人の父親として何よりも気になるのは・・・・

「親父」

 ・・・気になるのは・・・・

「・・・・・・!」

 振り返った瞬間、視界に入るのは、先ほどまでいなかったハズの、自分の息子。
 みかどはそこに立っていた。
 ・・・とまどいの表情を浮かべて・・・。

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