【第1部】第9話 光と影

「みかちゃ~~~~~んッツ!!!」

 扉があいた瞬間、視界に入って来たのは、会いたくてたまらなかった弟ではなく、鼻血たらしながら自分に向かって爆進してくる実の父親!!?

「うわぁあああああ!眼魔砲!眼魔砲!眼魔砲!眼魔砲!眼魔砲ー!!」
 みかどは恐ろしさのあまり、眼魔砲をタメなしで連射した。

ちゅどっこーん!!

 バロック団士官学校生であるにも拘らず、バロック団でナンバーワンのみかどが打つ眼魔砲の威力は、ハンパじゃない。
 みかどのパパ、えー、つまり、バロック団総帥ヴァーストは、見事に吹っ飛び、みかどを抱きしめるコトを許されなかった。

 血まみれであるにも関らず、ヴァーストは勢いよく起き上がり、そして
「何故拒むッ!?」
 こんなコトをほざく。
「何故と聞くのか!!!」
 みかども眼魔砲を連射したため、無駄な体力を使ってしまったらしく、ぜぇぜぇ息をきらしている。

 しかし、こんなトコでオヤジともめてるヒマはない。
 みかどは後ろにいる叔父を振り返り、睨みつけた。
 中にはみことがいると言っていたのに、出てきたのは、こんなオヤジかよ!

「騙したのか、おじさん!」
「・・・や、やはり父親の側にいるのが一番だろう・・・」
 ビリーヴはそう言って、みかどから目をそらす。
 すげぇ気まずそうに。

「本当にそう思うんか!?ってか、俺の目見ろよ!!」
 初めはそう思っていたが、この光景を見て、自分の考えに疑問を抱いたビリーヴだった。

 まぁ、気ィ取り直して・・・。
 みかどはやむをえなく、ヴァーストの部屋へ連れて行かれるコトになった。
 総帥の部屋で、みかど、ビリーヴ、そしてヴァーストは、差し出された紅茶を飲みながら、優雅にティータイム体制に入る。

「まったく、1年ぶりの再会だというのに、抱きしめることすら許されないとは。思春期の息子を持つと、色々寂しい思いをするモノだ」
 ヴァーストはそんなコトを言いながら、温かい紅茶を一口飲む。

「バカ言うな!誰だって鼻血たらしたオヤジが突進してきたら拒むわ!むしろそれが自分の親だと思うと、悲しくなってくるぜ」
 みかどもイラつきながら、紅茶を一口飲む。

「昔からみかどはそうだったな。ひのとなんて、今でも『お父様ーv』っていってしょっちゅう抱きついてきてくれるのに・・・」
「あれと比べんな。ところでオヤジ」
「みかどは見た目も日本人そのものだからな。母さんの日本人要素を強く受け継いでしまったのかもしれないな」
「あーハイハイ。それでな、オヤジ」
「そうだ、おまえ、母さんの墓参りもずっといってないじゃないか。今すぐとは言わないが、あとで必ず向かうんだぞ」
「わかったよ。だからオヤジ」
「士官学校のほうも、留年決定だからな。まったく、私の息子が留年になるなんて、思ってもみなかったよ。ひのとなんて、おまえがいなかった1年間で、留学してアメリカの大学を卒業したんだぞ」
「そいつぁ知らなかったケド、あいつ勉強だけはできるから別に驚くコトじゃねーよ。じゃなくて、オヤジ」
「さて困ったな。士官学校のほうも、飛び級制度がないわけではないのだが・・・」
「人の話を聞けー!!!」

 みかどはいつまでたってもヴァーストが自分の話を聞こうとしないので、思わず、紅茶ともどもテーブルをひっくりかえした。(ノ-_-)ノ┻┻

「何をする、危ないじゃないか」
「アンタが人の話を聞かないからだろーがッツ!!!」
 みかどはすっかりぷっつんしている。
 しかし、ヴァーストもビリーヴも動じる様子もなく、むしろどこからか傘なんぞ取り出して、ふっとんだ紅茶をふせいでいた。

 みかどは勢いに任せて、言葉を並べ立てる。
「俺が日本に帰ってきたのは、みことに会うためだ!おじさんから事情は聞いたよ!みことを幽閉した理由もわかった!だけど、だけど会いたいんだよ、みことに!」
 言葉をきってもなお、みかどはヴァーストの目を見て訴えた。
 父親の返答を待つ。
 しかし

「会ってどうする?」

 真剣に訴えたって、返ってくるのはいつだってこんな言葉。
 『会ってどうする』。
 これが父親の言葉か。
 みかどが再び何かを言おうとすると、ヴァーストはそれをさえぎった

「そんなに気が立ってる状態で、みことに会わせる訳にはいかないな」
 席を立ち、みかどがひっくりかえしたテーブルや、紅茶のカップを拾い上げる。
 そしてビリーヴに向かって、ころりと表情を変え、笑顔で言った。
「すまないな。今すぐ新しい紅茶を持ってこさせよう」

 いつも適当なことをいってはぐらかされる。
 1年前と、何ひとつ変わっていなかった。
 みかどの言葉を聞く気は、いや、みことに会わせる気はないようだ。

 ふと、ビリーヴを見た。
 ビリーヴもみかどの視線には気付いているハズなのに、決してみかどと目をあわせよとはしない。
 協力する気はないようだ。

 話してもムダだ。

 みかどはそう思い、ため息をついて、どっかりソファーに座り込む。
 座ったみかどを見て、ヴァーストは機嫌よさそうに笑った。

「みかどは?またダージリンでもいいかい?」
「何だっていいよ」
 みかどは投げやりに答える。
 そしてたわいもない話をするヴァーストとビリーヴを見て、どうやってみことを探し出そうか、考え始めた。

「と、いうワケで、みかどのヤロー、帰っちまいやがってコンチクショー!カンパーイ!!」
「かーんぱーい!!!」

 一方こちらはピュア島の浜辺。
 みかどが帰ってしまったため、いつバロック団が攻めてくるかわからないという、危険な立場におかれたこの島は・・・

 何故か全員集合して、宴会モードに入っていた。

「あの、ガマ仙人・・・」
 宴会モードについていけないささらは、場馴れしたみんなを見てとまどいながら、先ほど出会ったガマ仙人なるおじーさんカエルに話し掛けた。
「今は宴会なんてやってる場合じゃないんじゃ・・・」
「だーいじょうぶ大丈夫。まさか昨日の今日で、ヤツらも襲ってきたりはせんじゃろ。それよか、気持ちを整理する意味もこめて、酒でも飲んでぱーっと騒げ騒げv」
 そう言ってガマ仙人はぐびーっとお酒を飲み干す。

 それでいいんだろうかと思いつつ、まわりと見てみる。
 すると、みんなまだ真昼間だというのに、お酒を飲んで、「わーん、みかどさ~ん!」「なんで帰っちゃったのさ~!」「えーん!えーん!」などなど、口走りながら、すっかり涙酒。

 何よりも、動物のみんなが平気でお酒を飲むのに驚いた。
 とおるくんやたかしくんまで、フツーに飲んでるのを見たトキは、ちょっとショックだったケド。

「ささらー、どーかしたのか?」
 みんなのそんな様子を見守っていると、ひかりがささらに声をかける。
 お酒を飲んでも顔色ひとつ変えていない。
 どうやら酒には強いようだ。何となくわかるケド。

「い、いや、みんな場馴れしてるなぁと思って・・・」
「あぁ、年1回はガマ仙人が来て、こうやって飲み会でぱーっと騒いでっからなー。一応、ピュア島全員集合の機会はこの飲み会しかないワケだし」
「じゃあ、ガマ仙人ってお偉い仙人様じゃなくて・・・」
「あぁ、ただの宴会部長」
この状況下において、そんな・・・!
 ひかりに笑顔で答えられて、ささらはショックを受けた。

「ささらは酒飲まねーの?ホレ」
 ひかりはささらの目の前にどんっと一升瓶をおく。
 しかし、飲み会なんて生まれて初めて。
 なおかつまだ未成年のささらは、お酒なんて飲んだコトがない。
「あ、あたしまだ未成年だから・・・」
 と、言って断った。
 しかし、ふと、視界に入って来たきのえとあおいに気付く。

 あれ、あの2人も未成年のハズなのに、フツーにお酒を飲んでいる・・・?

「きのえさんもあおいさんも、お酒大丈夫なの?」
 ささらがビックリして尋ねると、
「そりゃ小せぇ頃からこの宴会参加して飲んでたからな」
「うん、慣れちゃったよネー」
 さらりと答えられてしまった。
 この2人も平気で何杯も飲んでいる。相当強いらしい・・・。

 ハッとささらは気付いた。
 どんな些細な衝撃でも、与えるとすぐに吐血してしまう、あのくれないさんは!
 お酒なんて飲んだら、体によくないのではないか!?
 ささらは慌ててくれないの方を向いたが、くれないもフツーに何杯も飲んで、海の向こうを見つめ、黄昏れている。
 あぁ、きっと日本に帰ってしまった友のコト(一応説明しておくと、みかど)を思っているのだろう。
 彼も強そうなので、これはこのままそっとしておくのがいいのかもしれない。
 ささらは思った。

 ささらはぽちとともに、黙り込んで座っているピュアくんの元へ戻る。
 昨日から話し掛ければそれなりの反応は返すが、それでも、ずっとこんな調子。
 ささらは心配そうにピュアくんの顔を覗き込んで

 -気がついた。

 ピュアくんとぽちまでお酒飲んでる・・・・!!!

 ささらは思わず、身を引いた。
「ん、どうかしたのか?」
 ささらの様子に気付いたピュアくんが、相変わらずのあの顔で尋ねてきた。
「う、ううん、何でもない・・・」
 とは言ってみるものの、6歳児まで酒を平気で飲みこなすこの島。
 酒豪ぞろいのこの島。
 改めて、常識は捨てなきゃと思った瞬間だった。

 ささらはピュアくんの隣りに座って、みんなの飲みっぷりを眺め続ける。
 みんなパーっと騒いでいるケド、その内容もみかどさんがいなくなって悲しんでいるコトばかり。
 きのえもあおいもひかりも、すっかり荒れている動物たちのなだめ役に徹している(くれないはまだ、海の向こうを見つめてたそがれ中)

 ・・・いいのかもしれない。

 ささらは思った。
 みんながガマンしてるツラさを、お酒を飲むことで思いっきり気持ちをぶつけ合い、また、共感し合うのも。
 ガマ仙人の言うとおり、それが気持ちを整理するという意味になるのなら・・・。

 などと考えていると、さっきまで泣いていたとおるくんとたかしくんが、ささらの元へトテテテと走ってきた。
「ささらちゃーん」
「ジュースあげるー」
 気持ちが落ち着いたとおるくんとたかしくんは、輪から外れておとなしくしていたささらに、気を使ってくれたようだ。
 ささらはそんな2匹の心遣いを嬉しく思い、ジュースの入ったコップを受取った。
「ありがとう」
 そして笑顔で返した。

 隣りに座っていたピュアくんが、ささらの一口飲んだものを見た。
 そして気付く。
「あ、ささら、ソレ・・・」
 しかし、ピュアくんが言い終わる前に、ささらは突然その中身をぐいーっと飲み干した。
 そして勢いよく立ち上がり、みんながたまっているトコロへずんずん突き進む。

「酒・・・だったな」
「キィ・・・」
 残されたピュアくんとぽちは、顔を見合わせた。

「よぉ、ささらー」
 ささらがやってくると、一番に迎えてくれたのはひかり。
 動物たちもウレシそうにささらの方を振り返った。
 ・・・・が。

「・・・・・サケ」
「は?」

「酒はどこじゃーーー!!」

 ささらちゃんが突然こんなコト叫んだー!
 しかもその目は完全にすわってるー!!
 さ さ ら は 酔 っ て い た ・ ・ ・ ・ ! 

「ささらさん、しっかりしてください!」
 波打ち際でたそがれていたくれないが、騒ぎを聞きつけてささらの元へやってくる。
 しかし、ささらはやってきたくれないの胸元をぐいっと掴み上げ
「酒どこ?とっとと持って来いよ、オラ」
 すわった目でくれないをじと~~~~っと睨みつける。
「や、あのささらさん、お気を確かに・・・・、ってか苦しいです・・・」

 くれないが酒を持っていないとわかると、すっかり猛獣と化したささらは、
「持って来いとゆーとるんじゃーーーーーーー!!!」
 くれないを片手で持ち上げ、ぶんぶん振り回し始めたー!
 ってか今くれないに吐血されたら、血の雨がふるー!!
「がふッ!!」
 と思ったら、ショックを受けたくれないは、やはり吐いたー!!!
 くれないの血が、あたり一面に飛び散る・・・!

「み、みんな早く逃げて!」
「ひー!バカささら!!早くくれない下ろせー!!」
 動物たちを非難させるあおいときのえに
「あはははは、ささら酒乱かよー」
 大笑いしているひかり。

「アホばかりじゃのぉ~」
 いつの間にやら、騒ぎの輪から外れて、ピュアくんの隣りに非難したガマ仙人。
 パニックしまくっているみんなを見て、そんなコトを呟きましたとさ・・・。

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