【葵さんからの小説】ピュア王国のプリンセス

 むかーしむかーし、・・・いやもしかしたら、そんな昔でもないかもしんないけど。とにかくある所に、『純粋魂王国』がありましたとさ。しかし見たままそのままそのまんま、国名があまりに語呂わりぃカッコわりぃのなんのってッ。だから国の人達は皆『PureSoul王国』と呼んでおりました。
 あ、ちなみにその国がどんな名前とかは本筋と関係無しね☆

 とにかくそんな平和な、(略して)ピュア王国がありました。ピュア王国には大変お可愛らしいという、お姫様が住んでおりました。お姫様は今年で十七、もうお嫁に行ってもおかしくはない年頃でした。
 ですがピュア王国に不穏な空気が・・・、流れてない流れてない。平和な国だっちゅーてんに、そう簡単に大ピンチっ★になってたまるかってんだ。んまあ今日も今日とて、平和なピュア王国です。

 ある日お城に、4人の若い青年達が招かれました。ですが彼らは、どうして呼ばれたのかが分かりません。使者からも、姫が関係するとしか聞かされていませんでした。首を傾げながらも、4人はピュア・キャッスル(正式名称:純粋城)に集まったのです。
 今回は、そんな王国のお話です。

「みんな、よく集まってくれた!」
 玉座に座るのは王様・・・でなくって、王様代理。しかもその代理というのが、まだまだ幼いピュアくんだったり。横には仲良しのぽちくんもおわします。

「・・・な、なあ。いくらなんでもアイツが王様の代理って、設定が無茶過ぎねえか!?」
「しーっ、きのえくんっ。そーゆー所をツッコんじゃいけないよ!」
 招かれた4人の青年のうち2人。きのえがヒソヒソ声で親友に囁くと、訊かれたあおいが慌てて黙らせた。とても王を前にする態度ではなかったが、目の前のピュアはあくまで王の代理であるのでご安心を。

 ていうか設定に関してのツッコミはノンノンなっすぃんぐ!こーいうのは書いてる奴の都合でどーにでもなるんだよお二人さん♪

「ピュア、いきなり俺達を呼んでどうしたんだー?」
 特に疑問もなんも抱かずに、一等年上のひかりがピュアに尋ねる。こんなツッコミなしの人間こそ、こんなパロディーには持って鯉なのである。さすがはリーダー、助かるぜ!

「なんか、姫がどーだとかお聞きしましたけど・・・ごふっごふっゴブフッ!!」
 最初の方は比較的マトモに台詞をしゃべっていたくれないだったが、後半から恒例の吐血症状に入って思いきりむせるむせる吐いてる吐いてる。

「ゲホっ!ごげふっ!!えっふゲフ!!ゴァアっ!!」
 咳ってだけでなく血も吐いているのだし、やはりというか当然というか彼の息はゼーハーと荒いものであった。
「・・・ゲホ!・・・ゴフ・・・ッツ!!」

 ハァハァと肩を激しく上下させながらも、ようやく落ち着いたのかくれないはつつーと上目を向ける。しかし落ち着いたと言ってもまだ吐血しているらしく、口の端からまだなお血液を滴らせながら。
「あ、あの、なんで皆さん誰もぉ~私のこと心配してくれないんですか・・・?」
 こんだけ血ぃ吐いてんだし、明らかに重病状態だ。普通この状況では、病院へ連れてかねばならないだろう。だが誰も、くれないに近寄る気配すらない。
 哀しげな表情。だが瞳の奥のどこかではまだ、希望の炎が灯してあった。

「な~んだお前が血ィ吐くなんて、いつものことじゃねえかよ」
 明るく笑って言うのは、ひかりさん。

「下手に近寄って、燃やされたらヤだしなー」
 腕組んだまま明らかに拒絶したのは、きのえくん。

「なんかいつもより吐くの激しかったし、やっと兄ちゃんにお迎えが来て楽になれるんだと思って♪」
 いっちばん嬉しそうに言ってるのは、モチロンのことながらあおい。吐血兄貴の実弟!

「あおいーーーーーー!!そんなにこの兄が嫌いなのですか~~~~ッツ!?」
「・・・なんだ分かってんじゃん・・・」
 まあそんな夫婦漫才ならぬ、兄弟漫才が大声小声で展開されていたってのはまた別の話でっ。

「それじゃ話を進めるぞー」
「おう、頼むわ~」
「ああっちょっとッ、やっぱり誰も私の心配はしてくれないんですか!?・・・ねぇ!!」
 血を吐いている割にはやたら元気な、くれないの悲痛な叫びはムッシング。ピュアの話は現在進行開始。

「まずこれから、みんなには戦い合ってもらいたいと思う!」
 ・・・・・・What?
 先ほどまで騒いでいた誰もが誰も、一時静粛になる。ちょっと高度なテクニックで、疑問の気持ちをアメリカンイングリッシュで心中表しながら。

 言い方こそソフトなものの、なんかバトロワのプロローグくさいなーとか。
「みんなの知っての通り、この国ささら姫は今年で17才。そろそろだと思う」
 招かれた4人は、姫の婚期適齢期に位置する年齢を聞き、各々があーと少しだけ納得する。
 なんだかんだで、姫は17才なのだ。

こちらバルコニー。ツタが茂るバルコニー。バルコニーにはプリンセスがいるってのが定番。白雪姫やジュリエットとかセレニティやら、とにかく姫系キャラがいるのが定番。お姫様っつったら、バルコニーでドレスひるがえしてるもんなんや~!
「・・・どぉしよーーーーーーー!!武道大会で勝った人のお嫁になんてなりたくないーーーーーー!!」

 というワケで、ピュア王国ピュア・キャッスルのバルコニーでは、この国のお姫様であるささら姫がおおいにお悩みになっていた。悩みのタネはズバリ、本日の4人の青年招集のことである。
 ナニがあったのか突然、本日呼ばれた4人らのみで武道大会が開かれるのだとか。そうしてこれも古来からのお約束、優勝者には姫が・・・らしい!なんともドラクエⅣちっくなストーリーであった。
「イヤよイヤよ!まだ、結婚なんてしたくないもんーーーーー!」

 ささら姫は頭を抱えながら、バルコニーの端から端を行ったり来たりで歩き回る。そんな事していたって事態が解決するわけでないのに、彼女にはこうして慌てふためくことしか出来ないのである。
「私はこのお城で育ってあんまり外にも出たことないし、もっともっと広い世界を見たいの!・・・誰でもいいから助けて・・・!!」

「よしきた!」

「・・・へ??」

 ささら姫の叫びに、頼もしい助けの声はあっさりと響いた。そこへ七色の煙とともに表れたのは、真っ黒なローブを着て、細長い木の杖を持った男の人。
「俺はみかど。ピュア王国のお姫さん、おめえのその願いを叶えてやろうじゃねえか?」

 いかにも私は魔法使いまっせヨロシクって感じの人の登場に、ささら姫はあんぐりと口を開けて驚いた。突然のことで、どう反応していいのやら戸惑っているのだ。

「・・・すごーい、魔女のおばあさんだ~!」
「違う!!俺はお兄さんだろがッツ」
「ああ、ゴメンナサイ間違えましたっ。・・・魔女のお兄さんだ~!」
「だから女じゃねえから魔女じゃねえだろがーーーーッツ!!魔法使いって言え、魔法使い!!」
 魔法使いみかどは、額に青筋を浮べているのがありありであった。さすがに寛容なお兄さんといえど、重なるボケには堪忍袋の緒も切断寸前であるらしかった。

「・・・ええと、それで。魔法使いのお兄さんのみかどさんが、私を助けてくれるんですよね?」
「まあ・・・、な」

 期待と希望に、目をキラキラと輝かせながら尋ねるささら姫。そんな頼りすがって来る姿を見れば、実はツッコミ疲れてムカムカした助けたくなくなってただなんて・・・口が裂けても言えないみかどだった。

「まあ今回は特別に、お前を魔法で城から逃がしてやろう。そうすれば結婚させられなくても済・・・」
「ちょーーーーーっとお待ちをーーーーーーーーー!!」
 ノックもせずに、マナーがなってないわねプンプン。突然ささら姫の部屋の扉を、何者かが開けました。マズイ、これでは逃げることが出来ないと、ささら姫は焦るのだった。

「今あなたに逃げられては困りますよ。ささら姫!」
 入って来たのは、片眼鏡がキラリと光るナイスなメガネ兄貴中年!・・・ってのは間違っていないが、正確にはこの国の大臣が入室してきた。

 この国の大臣橘は、どうしてかささら姫のことを良く思っていない。彼の手にかかっては、脱走は確実に無理な話となるだろう。・・・だ~がささら姫が注意を向けたのは橘ではなく、その傍らにいる者の方へであった。

「あ、ひのちゃ~ん!ひのちゃんって王子様ルックがとっても似合うねー♪」
「さっちゃんこそ、お姫様ルックがとっても似合ってるよー♪」
「・・・話の展開無視して和むなソコーーーーーーーッツ!!」

 橘と共にやって来たのは、ひのと王子。橘とは違ってささら姫とは仲の良い彼であるが、放っとけばこの二人は和み続ける。そうなってしまったら、マトモなストーリー進行をするためには、ここはマトモな人間が、ストップ☆ザ・和みムードをしなければならいのだ。ちなみに停止をかけたのはみかどであった。

「やすやすとひのと様に近づくんじゃありません、このスカパー小娘がっ!!」
 やはり橘は、ひのとと仲良しなささら姫に対して敵対心剥き出しの言動を投げかける。毎度の事だとはいえ、仲良くしていて何が悪いのか分からないささら姫は、うつむき加減になってしまった。

―『スカパー』って・・・。『スカイパーフェクTV』じゃなくて、やっぱり『スチャラカパー』の方を言われてるのよね・・・??―

 比較的どーでも良い事を、ささら姫は脳ミソフル回転させて悩んでおられた。まさに今日は悩みデーであった。
「・・・ところで橘さん!どうしていきなり私、武道大会で勝った人と結婚しなくちゃいけないんですか!?そんな命令・・・、お義父様が出すはずなんてないわ!!」
「あー、そうでしょうともねー。アイツここ7年くらい、まともに玉座に座らないで放浪の旅ですからね~。命令なんて出せませんよー」
「なあっお義父様ぁ、国王が職場放棄だなんて~っ!!」
 諦めろささら姫ッ、所詮それが君の育ての親さ!!

「おいおい・・・。国王が今いないんじゃ、その武道大会がどーのっていう話は誰の命令なんだ?」
 部外者ながらも、私情を挟ませずに司会進行を努められるのはみかどオンリー。テンポ良く確信を突いた質問を投げかけてくれる。
「ピュアくんの命令だよー。国王代理のっ☆」
「そ、そんな・・・ピュアくんが・・・!?」

 やけに呑気に言ってくれるひのととは逆に、やはり当事者であるささら姫はクラリと立眩みが来たような感覚に陥った。いくら国王代理だって、まさかささら姫の結婚話を勝手に決めてしまうだなんて。日頃仲が良かっただけに、姫には信じられなかった。
「・・・なので、ピュア国王代理から手紙を預かっています。とっとと読んでください
 ひのとにも自分にも関係のないことだし、興味も無さそうに橘が差し出したのは手紙。ささら姫の目が、彼の手元へと釘付けになった。
「て、がみ・・・?」
 この中で、事情説明でもしているのであろうか。ささら姫は震える手で受け取り、封筒を開いた。

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