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「な~んだ、二人とも恋の相談できたのか」
ようやく二人からあおいへの用の真相を聞かされて、あおいは素直にほっとしてしまった。
黙って言うことをきけなんていうからどんなドス黒い用事かと思ったのだ。
しかし、この二人の恋路というものは、ある意味犯罪計画よりも難しいものだと気付くのに、
あおいは数秒とかからなかった。
「そうなのよ。実際どうよ、あおい」
「そう言われても…。というか、ぼくは確かにきのえくんの親友ではある。
けどあいつのことは関係ない!ぼくに聞かないでくれ!」
それは、たとえかのこに胸ぐらつかまれようと(実際すぐつかまれた)、あおいの正直な気持ちだった。
「なんですって?」
「あいつのことなら、どっか別のところで聞いてくれ!」
「い~い?あおい。くれない様は孤独な方なのよ。
友達は校内広しといえどもささらだけ!クラスでは村八分状態!
そんなくれない様の心の壁を真に取り払う相談ができるのは肉親のあんたしかいないのよ!わかる?」
あんまりわかりたくなかった。
「じゃあくれないさんのことはひとまずおいておいて、」
「おいこら」
「あおいさん、きのえさんの好みのタイプとか知らない?」
「好みのタイプ?うーん、どうだろう。きのえくん、あんまりそういう話しないから」
「そうなの…。私、一体どうしたら…」
しゅん、としおれてしまった風なみお。
先ほどされたことも忘れて(そういうのんきなところがあおいの美点でもある)、あおいはつい心動かされてしまった。
こういう女の子らしいところを、もっときのえくんに見せたらいいのにな。
その思いつきがあおいにアドバイスを絞り出させた。
「あのさ、思いっきりアタックするっていうよりも、もっとおとなしやかに近づいてみたら?
きのえくんだって、控えめに声かけられたらそうそう邪険に出来ないと思うよ」
親友をブラックホールに陥れるようなことを、笑顔で言う素敵な少年・あおい。
「で、でも…、私、きのえさんに近づくと、わけわからなくなっちゃって…」
「それこそさ。何とかおさえらんないの?あんた演劇部でしょ?
舞台の上だと思って”大和撫子な私”ってのを演出して行けばいいじゃん」
みおは、「あ」の形に口を大きく開けて(あごが外れんじゃないかってくらいでかい開き方だった)かのこを指さした。
盲点だったらしい。
「な、なるほど…」
「ふふん、いい作戦でしょ?」
得意げにウインクするかのこ。あおいは女の打算というものの神髄を見た気がして少し鳥肌がたった。
「ありがとうかのこちゃん!」
みおは感動のあまりかのこをぎゅっと抱きしめた。
かのこはわずかに慈愛のこもったまなざしで、その頭をなでる。
そしてみおの肩を押さえてグッと引き離した。
「さ、あんたの方針が決まったところで、次はあたし。
どうしたらいいと思う?」
話を振られて詰まるあおい。
「だからさ、ぼくはあいつのことはわからないって。わかりたくもないし。
大体あんな奴のこと好きになってくれるのなんてかのこちゃんくらいだと思うから
今のまんまでもどうせライバルなんて現れないし別に大丈夫だと思うよ」
ものすごく投げやりだが、意外と当たっているような気もする発言だった。
「ねえ。くれない先輩って、要するに普段から一人なんでしょう?
かのこちゃんも一週間くらい一人にしておいて、くれない先輩が寂しくなってきたところで優しくしてみたら?
案外効果あるかもよ」
またひどい目論見をさらりと言うみお。
しかし、かのこの目は「それよ!」というようにキラリと光った。
「それよ!」
ほら言った。
「突然話しかけなくなった恋人に、不安を抱くくれない様!離れることで初めてわかるいとおしさ!!
そしてくれない様の心を優しくあたためる私!!OK、それでいきましょう!!!!!!!!!!」
興奮しすぎてエクスクラメーションマークの多さが尋常ではなくなっている。
「か、解決したんなら何よりだよ。じゃあ僕はこれで」
「きのえさん…」
「くれない様…」
そそくさと逃げ出すあおい(ちなみにここはまだ体育倉庫の中であった。埃っぽさと愛のオーラが混ざって非常に謎の空気を放っている)
しかし、かのこもみおも自分の恋の未来ロードへの夢想状態にどっぷりで、あおいのことなどもはや見えていなかった。
あおいは、部活に大幅に遅れたことで叱られた。
しかし、理由を言うことは、ついぞできなかった。
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