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今日のくれないは幾分か気分がよかった。
朝から一度も吐血していないしっていうか今まだ朝まっさかりなのですが。
学校への道すがら、くれないはいつもの通り歩いていた。
本当にいつも通りなら、このあたりで…。
…。
……。
………?
学校についてしまった。
そのまま歩いていくが何事もなく教室まで着く。
「あれ…?」
今朝はあの声が聞こえなかった。
「くれない様~!」とものすごい勢いでかけられるあの声が。
「……?」
くれないは胸を押さえながら、
今日は来なかったんですね、ラッキー。
という偽らざる感想を抱いていた…。
今日のきのえはなかなか機嫌がよかった。
昨日あおいの奴と電話で色々話したりしたっていうかささらとのことをからかってやったのだが。
学校への道すがら、きのえはいつもの通り歩いていた。
本当にいつも通りなら、このあたりで…。
「きのえ、さん…」
振り返ると、予想した通りの女がいた。
髪のやたらと長い、声もやたらとでかい、やたらとうるさい女。
この時点ではかけられた声がか細く、いやに控えめなことに驚きはしなかった。
なぜならこの女は毎日違うテンションできのえにからんでくるから。
だからこれもただの前振りだろう、と身構えた。
しかし。
「おはよう」
微笑んでそれだけ言うと、みおは軽くお辞儀をして学校に入っていってしまった。
…。
……。
………!?
今日は、からまれなかった。
それどころか、ごく普通の朝の挨拶だった。
「あん…?」
きのえは髪をかき上げて立ち止まり、
まぁ、絡んでこなくて良かった、ラッキー。
という、やっぱり偽らざる感想を抱いていた…。
かのことみおは、昨日決めたとおりの作戦に忠実に行動していた。
かのこは一切くれないの前に姿を現さず、ささら達としゃべったりするだけの余暇を過ごした。
ただ、「くれない様に淋しい思いをさせて最後に私が」がかのこの作戦のモットーだったので、
ひそかにくれないの動向だけはチェックし、
少しでも近づこうとした者は容赦なく抹殺する覚悟だった。
しかし、かのこの心配は杞憂だったようで、くれないに近づこうとする者は皆無だった。
まともな神経の人間だったら、あまりの寂しい生活に目も当てられなかっただろう。
なので、たまにささらが「あ、くれないさん。こんにちは~!」と声をかけようとするのを、
「ささらっ!あっちにあおいが!!」とあさっての方向を全力で指さして阻止するくらいしかすることがなかった。
みおは今まで通りきのえの前には姿を現した。
だがそれは今までのようにからんで云々、という感じではなく、
会ったら挨拶をする、部活の調子を聞く、そのくらいのことであった。
異常な人間が普通の振りをするほど嘘くさいことはないのだが、
みおは驚異の演技力でそれをこなしていた。
くれないはここ数日間、穏やかに時を過ごした。
かのこがつっかかってこないおかげで、心なしか体の調子もいい。
一人は寂しいけど、それはそれとして今の状態が長く続けばいいなと思っていた。
きのえもここ数日間、穏やかに時を過ごした。
最初はおとなしくなってしまったみおを警戒していたが、数日もすると何だか慣れていた。うるさくないのはありがたい。
何を考えているのか知らないけどこのまま静かにしてるといいなと思っていた。
しかし。
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