レンが確実にいなくなったのを見て、橘が口を開く。
「で、何が聞きたいんですか?」
「え?」
「その顔。あなたのその顔を見ればわかります。何か私にききたいのでしょう」
橘の言葉にビリーヴはふっと微笑んだ。
「橘は私の考えていることがわかるのか?」
「半分はね」
そしてビリーヴはカルピスを一口飲んだ。
「・・・。何故彼は子悪魔なんだ?確かに子悪魔っぽいか・・・。まぁ、うるさいっていうのもうなずけるがな・・・」
橘はその言葉を聞いてビリーヴのカルピスを奪い取り、全てを飲み干す。
「・・・何をするんだ・・・?」
「こんぐらい情報提供をした報酬だと思ってください」
しばしの沈黙。
最初に口を開いたのはビリーヴだった。
「まぁ、納得しよう。それで?」
言いながらビリーヴはポケットの中からオレンジジュースを取り出した。
橘はビリーヴのその行動を凝視した。
「・・・何本持ってるんですか?」
「秘密だ」
「・・・そうですか・・・。まぁ、いいですけどね。で、レンが子悪魔って言われてるわけですけど・・・」
そういいながら橘はビリーヴのオレンジジュースを奪い、ふたをあけ、一気に飲み干した。
そうすると今度は牛乳を取り出したビリーヴ。
「彼はよく教室の窓を割るんですよ。しかも教室で一人野球をして割るんです。やめろっていわれてもやめないし、しれで今まで何枚窓割ったと思います?」
今度はビリーヴの行動には驚かず、話し出す。そして途中でビリーヴに問い掛ける。
「5枚くらいか?」
「ケタが違う」
「ケタ・・・?」
「50枚です」
しばしの沈黙。
「すさまじいな」
「すさまじいです」
再び沈黙の後、橘が口を開いた。
「それだけではありません。この前なんてただっぴろい校舎の水道という水道の水を全部流していたんです」
「・・・でもそれだけでは子悪魔じゃないだろ」
牛乳を一口飲み、ビリーヴ伸びをした。
「窓を割ったときケガ任は随分でました。B組の教室はなんと言っても運動場の隣りの教室ですから」
「割れたガラスの破片が運動場に落ちて・・・ってコトか」
二人の間を風が通り抜けた。
「それはもう、子悪魔の域を越えてると思うが・・・」
「それはいいっこなしです」
「そうか」
そのとき、チャイムがなった。
ビリーヴがふと腕時計を見ると、張が挿していた時間は1時丁度。
(予鈴か・・・)
「そろそろ戻りますか?」
橘の言葉にビリーヴは「あぁ」と答えてその場を離れた。
一度も振り向かなかったからビリーヴも橘も気がつかなかった。
まだその場にレンが残っていたコトも、そしてこう呟いたことも。
「子悪魔以上にすごいこと、もうじきおこしてやるから待っててくれよ」
それからはこの3人が一緒にいるところがよく見かけられた。
昼休みはもちろんのコト、授業の間の少ない休み時間にも一緒だった。
それは生徒先生の間ですぐにうわさになった。
この士官学校始って以来天才2人と問題児1人。正に異色の組み合わせというほかない。
だからみんなが不思議がる。
何故この3人が。
何故レンが。
それから1ヶ月が過ぎた。
それから校舎の中で普段見かけない姿がみかけられた。
ビリーヴの兄、ヴァースト。
今日この「学校」にきたのは2つの目的があるからである。
1つは生徒たちの様子を見に。もう1つはある生徒の血に、人ではない特別な何かが混ざっていたからだ。
その生徒の名前はレン。
ふとヴァーストは窓から中庭を見た。
底にいたのはビリーヴと橘、そして見知らぬ少年が1人。
「彼は・・・?」
ヴァーストは隣りに引き連れていた教師に聞いた。
「あぁ、あの生徒はレン・アカイという生徒で、とてつもない問題児なんです。何故あのビリーヴくんや橘くんと一緒にいるのか、わたしどもにもわからなくて・・・」
教師の話など、ヴァーストは聞いてもいなかった。
彼の頭にあるのは
(彼がレン・アカイ・・・)
と、いうことだけ。
「おもしろい・・・」
-彼らの夏がもうじき終わる-

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