【第1部】アイ~I・eye・愛~【原案者このか執筆】

-秋が近づいた夏、彼らに運命の日が来る-

ヴィーン、ヴィーン

 激しい音をたてて、機械がなる。
 複数の足音、交わされる怒声。

-非常時-

 暗闇の中、赤いランプが光っている。
 異次元のような今。
 ビリーヴはその中にいた。

 今から一時間前、バロック団関連のコンピューターが、すべて、ウィルスに食いつぶされた。
 今まで起動していたコンピューターは全て停止。データがなくなり、ウィルスも死なない。復興のめどなし。
 そしてこの完璧なウィルスをつくり、そして植え込んだのが

-レン-

 ビリーヴは兄、ヴァーストの言葉を思い出していた。
-あの男はもうじき我々の敵となる-

「冗談じゃない・・・」
(どこだ、どこにいる、レン・・・!)
 中庭にはいなかった。
 二人が初めて会ったあの廊下にも・・・。
 そうすると残りは
(屋上!)

 ・・・しかし、屋上ならばすぐに見つかってしまうはず・・・
(行ってみる価値はある)
 ビリーヴは走った。
 途中橘が声をかけたが、そんなのは知らない。
 ビリーヴはただ、レンを探しに屋上まで走っている。
 他のものなんかには目もくれず・・・。
 そして屋上のドアにたどり着いた。
(頼む、レン。ここにいてくれ)
 ビリーヴはレンがここにいてくれるコトを願った。
 そして扉を開ける。

-ギィ・・・-

 眩しい。
 太陽の光だ、
 シャッターに閉ざされてしまった学校内とは違い、外は明るかった。

「やあっと来ましたか、ビリーヴ」
 レンはいた。
 そこに・・・。
 太陽を背中に受けて、
 いつもと変わらない笑顔で・・・。

「1ヵ月ぶり?」
「・・・何故、こんなコトをした・・・?」
 レンはおちゃらけ顔から一気に表情を崩した。

「なぜ・・・?俺にソレを聞くのか、ビリーヴ」
 レンもビリーヴも動かない。動けない。
「いっただろう?俺は人間はないって」
 そしてレンは薄く笑った。ビリーヴはじっとレンを見ている。

「おまえが俺のこと、人間だって言ってくれたときは嬉しかった。・・・すっげ0嬉しかったんだ・・・。でも、やっぱり違った。違うんだ!何もかも!!この手も!足も!髪も!血も!!この体syべてが違うんだ!!・・・・・・・・・・人間じゃ・・・ないんだ・・・・・」
 最後の言葉を吐き出したレンはつらそうだった。つらくてつらくて・・・。

 ビリーウはレンが泣いているのかと思った。
 レンの体が小さく震えている。

-何かしてやりたい-

 ビリーヴはそう思った。同情心からではなく、本心から。
 この大切な愛しい親友に、何かしてやりたい。
 大丈夫だよっていってやりたい。人間だよって言ってやりたい。
 でもいえなかった。

 言う前にレンが口を開いたから。
「なぁ・・・、ビリーヴ。ヴァーストに伝えといてくれ。子守唄には気をつけろっていっただろって」
「子守唄・・・?」

 レンがビリーヴに近づいて行く。
「そう、子守唄。あのウィルスの名前だ。コンピューターが眠ったように動かなくなるから、子守唄っていうんだ」
「・・・・・いいネーミングだな・・・」
「だろう?」

 レンはビリーヴに向かって歩き出した。
「ビリーヴはさぁ、何のために屋上に着たんだ?」
 一歩一歩確実に近づいてくる。
「俺に会いにとか?」
 そしてビリーヴの目の前まで来た。
 レンはそっと、ビリーヴの服のポケットに手を入れた。

「でもビリーヴ・・・。ビリーヴは俺を殺せるの?」
 ビリーヴのポケットから抜いたレンの手の中には、ちっちゃな銃が入っていた。
「ムリでしょう。ムリだよね」
 声の調子が変わってきた。

 ビリーヴの両腕を掴んできたレンの手は、まだ震えている。
「ムリだろう・・・?なぁ、ビリーヴ」
 レンはだんだん、ビリーヴが何も喋らないことが不安になってきた。
「なぁ、ビリーヴ・・・、ムリだよな・・・・・・・・・ムリって言えよ!!ビリーヴ!!!」
 絶叫に近かった。

 泣いてる。
 今度こそ本当に泣いてる。
 レンがこんなにも小さく感じたことなんかなかった。弱く感じたことなんかなかった。
 レンが人間じゃないっていってたときよりも、レンは不安定だった。
 そしてビリーヴは哀しさのあまり、声もでない・・・。

「なぁ、ビリーヴ・・・。俺、オマエのことが好きだよ・・・。大好きだよ・・・・。ずっとずっと親友だよな・・・?親友だよな・・・・・。な・・・。な・・・?ビリーヴ・・・」

 レンはビリーヴから離れていった。

「やばいって思ったんだ・・・。俺の中で・・・・警報がなったんだ・・・。これ以上近づくな、これ以上かかわるなって・・・。俺スパイなのに・・・、スパイなのに・・・・・・、その役目が果たせないんだ・・・。友達だって、親友だって思ってたから・・・・」
 レンは正常ではなかった。
「レン・・・?レン、私も、私もレンのことを親友だと思っている。・・・私だけじゃない・・・、橘だってそう思っている・・・」

 ビリーヴは哀しくて哀しくて、とりあえずレンを落ち着かせてやりたかった。
 レンはすがるような目でビリーヴを見つめる。
「・・・・・本当・・・・?」
「あぁ、本当だ。・・・だからレン、銃をこっちに・・・・」
 もうレンはビリーヴのいうことを聞いていなかった。
 ビリーヴも橘も、自分のことを親友だと思っていてくれたことが嬉しくて、聞いてなどいなかった。
「そっか・・・。なぁんだ、友達なんだ。ビリーヴも橘も・・・、俺のこと、親友だって思っててくれてたんだ・・・。なぁんだ、おれだけじゃなかったんだ・・・・」
 嬉しそうにレンが笑った。子供のように。
 そして銃の持っていない左手で、自分の右耳たぶにふれた。

「・・・なぁ、ビリーヴ、気付いてた?今日のピアス、ブルーなんだ。お前の目の色と同じ、おそろいなんだ。俺、お前の目、本当に好きだから・・・」
 そういって、レンはゆっくり右手の銃を、自分のこめかみのあたりにあてる。

「俺も・・・帰れるかな・・・。お前の目と、おーんなじ色の空に・・・」

ドォオン

ひどい音がした。
 そして・・・、煙の臭い・・・。
 ひいたのだ、彼は引き金を・・・、自分で・・・、自分の頭にあてて・・・、ひいたのだ。

 真っ赤・・・。

 真っ赤に目の前が染まった。
 どちらかというと、朱色にも似た赤。

 血だ。

 ビリーヴは反射的にそう思った。
 血とは似ても似つかないのに・・・、ビリーヴは思った。
 レンの血だ・・・。

 彼は倒れたレンの死体に目を下ろした。

 幸せそうなレンの顔。

 でも、頭は貫通していて、純白だった服は、彼の血で真っ赤に染まり
 彼が嬉しそうに話していたビリーヴの瞳と同じ色をしているピアスも、血がついていて・・・。

 ひどい仕打ち

 初めて親友だと思ったのに・・・。
 自分にはないものをもっていたのに・・・・。
 こんなひどい仕打ち・・・。

「・・・・・ずるいよ、レン・・・。私を残していくなんてズルイよ・・・、レン・・・・」
 そしてレンの頭をそっとなでる・・・。
 愛しげに・・・。

「あぁ、そうだった。お前はこの目がほしいのだったね。
 いいよ、あげる。約束だったからな。お前が・・・・お前が、死・・・、死ん・・・死んだ・・・・ら・・・、この目を・・・・やる・・・って・・・・・・約束・・・・・・したからな・・・・・」

 涙・・・。

 そんなの流したのは初めてだ。
 人のために流したのなんて・・・。
 ビリーヴは自分の目に手をあてた。

 そして器用に抉り出したのだ、眼球を・・・。
 痛みなど感じなかった。

 ただ、血で・・・。

 血で、レンが見えなくなった。片方だけの目なんてどうでもいい。
 ビリーヴはただ、レンを見て痛かっただけなのに、血で見えないなんて・・・。

「レン・・・、やるよ・・・・。約束守っただろ・・・・。なぁ、レン・・・・、レン・・・・・・・・・・・」
 返答がなかった・・・・・。・・・・あるハズもない・・・・・・。
 ビリーヴは急に自分が一人ぼっちになってしまったようで、たえられなくなった。

「うわぁあああああああああ!!!!!」

I ・ eye ・ 愛

よく晴れた日、秋が近づいた夏の日、1人の少年が死んだ。

-俺、レンっていうんだ、ヨロシクな!-

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