-秋が近づいた夏、彼らに運命の日が来る-
ヴィーン、ヴィーン
激しい音をたてて、機械がなる。
複数の足音、交わされる怒声。
-非常時-
暗闇の中、赤いランプが光っている。
異次元のような今。
ビリーヴはその中にいた。
今から一時間前、バロック団関連のコンピューターが、すべて、ウィルスに食いつぶされた。
今まで起動していたコンピューターは全て停止。データがなくなり、ウィルスも死なない。復興のめどなし。
そしてこの完璧なウィルスをつくり、そして植え込んだのが
-レン-
ビリーヴは兄、ヴァーストの言葉を思い出していた。
-あの男はもうじき我々の敵となる-
「冗談じゃない・・・」
(どこだ、どこにいる、レン・・・!)
中庭にはいなかった。
二人が初めて会ったあの廊下にも・・・。
そうすると残りは
(屋上!)
・・・しかし、屋上ならばすぐに見つかってしまうはず・・・
(行ってみる価値はある)
ビリーヴは走った。
途中橘が声をかけたが、そんなのは知らない。
ビリーヴはただ、レンを探しに屋上まで走っている。
他のものなんかには目もくれず・・・。
そして屋上のドアにたどり着いた。
(頼む、レン。ここにいてくれ)
ビリーヴはレンがここにいてくれるコトを願った。
そして扉を開ける。
-ギィ・・・-
眩しい。
太陽の光だ、
シャッターに閉ざされてしまった学校内とは違い、外は明るかった。
「やあっと来ましたか、ビリーヴ」
レンはいた。
そこに・・・。
太陽を背中に受けて、
いつもと変わらない笑顔で・・・。
「1ヵ月ぶり?」
「・・・何故、こんなコトをした・・・?」
レンはおちゃらけ顔から一気に表情を崩した。
「なぜ・・・?俺にソレを聞くのか、ビリーヴ」
レンもビリーヴも動かない。動けない。
「いっただろう?俺は人間はないって」
そしてレンは薄く笑った。ビリーヴはじっとレンを見ている。
「おまえが俺のこと、人間だって言ってくれたときは嬉しかった。・・・すっげ0嬉しかったんだ・・・。でも、やっぱり違った。違うんだ!何もかも!!この手も!足も!髪も!血も!!この体syべてが違うんだ!!・・・・・・・・・・人間じゃ・・・ないんだ・・・・・」
最後の言葉を吐き出したレンはつらそうだった。つらくてつらくて・・・。
ビリーウはレンが泣いているのかと思った。
レンの体が小さく震えている。
-何かしてやりたい-
ビリーヴはそう思った。同情心からではなく、本心から。
この大切な愛しい親友に、何かしてやりたい。
大丈夫だよっていってやりたい。人間だよって言ってやりたい。
でもいえなかった。
言う前にレンが口を開いたから。
「なぁ・・・、ビリーヴ。ヴァーストに伝えといてくれ。子守唄には気をつけろっていっただろって」
「子守唄・・・?」
レンがビリーヴに近づいて行く。
「そう、子守唄。あのウィルスの名前だ。コンピューターが眠ったように動かなくなるから、子守唄っていうんだ」
「・・・・・いいネーミングだな・・・」
「だろう?」
レンはビリーヴに向かって歩き出した。
「ビリーヴはさぁ、何のために屋上に着たんだ?」
一歩一歩確実に近づいてくる。
「俺に会いにとか?」
そしてビリーヴの目の前まで来た。
レンはそっと、ビリーヴの服のポケットに手を入れた。
「でもビリーヴ・・・。ビリーヴは俺を殺せるの?」
ビリーヴのポケットから抜いたレンの手の中には、ちっちゃな銃が入っていた。
「ムリでしょう。ムリだよね」
声の調子が変わってきた。
ビリーヴの両腕を掴んできたレンの手は、まだ震えている。
「ムリだろう・・・?なぁ、ビリーヴ」
レンはだんだん、ビリーヴが何も喋らないことが不安になってきた。
「なぁ、ビリーヴ・・・、ムリだよな・・・・・・・・・ムリって言えよ!!ビリーヴ!!!」
絶叫に近かった。
泣いてる。
今度こそ本当に泣いてる。
レンがこんなにも小さく感じたことなんかなかった。弱く感じたことなんかなかった。
レンが人間じゃないっていってたときよりも、レンは不安定だった。
そしてビリーヴは哀しさのあまり、声もでない・・・。
「なぁ、ビリーヴ・・・。俺、オマエのことが好きだよ・・・。大好きだよ・・・・。ずっとずっと親友だよな・・・?親友だよな・・・・・。な・・・。な・・・?ビリーヴ・・・」
レンはビリーヴから離れていった。
「やばいって思ったんだ・・・。俺の中で・・・・警報がなったんだ・・・。これ以上近づくな、これ以上かかわるなって・・・。俺スパイなのに・・・、スパイなのに・・・・・・、その役目が果たせないんだ・・・。友達だって、親友だって思ってたから・・・・」
レンは正常ではなかった。
「レン・・・?レン、私も、私もレンのことを親友だと思っている。・・・私だけじゃない・・・、橘だってそう思っている・・・」
ビリーヴは哀しくて哀しくて、とりあえずレンを落ち着かせてやりたかった。
レンはすがるような目でビリーヴを見つめる。
「・・・・・本当・・・・?」
「あぁ、本当だ。・・・だからレン、銃をこっちに・・・・」
もうレンはビリーヴのいうことを聞いていなかった。
ビリーヴも橘も、自分のことを親友だと思っていてくれたことが嬉しくて、聞いてなどいなかった。
「そっか・・・。なぁんだ、友達なんだ。ビリーヴも橘も・・・、俺のこと、親友だって思っててくれてたんだ・・・。なぁんだ、おれだけじゃなかったんだ・・・・」
嬉しそうにレンが笑った。子供のように。
そして銃の持っていない左手で、自分の右耳たぶにふれた。
「・・・なぁ、ビリーヴ、気付いてた?今日のピアス、ブルーなんだ。お前の目の色と同じ、おそろいなんだ。俺、お前の目、本当に好きだから・・・」
そういって、レンはゆっくり右手の銃を、自分のこめかみのあたりにあてる。
「俺も・・・帰れるかな・・・。お前の目と、おーんなじ色の空に・・・」
ドォオン
ひどい音がした。
そして・・・、煙の臭い・・・。
ひいたのだ、彼は引き金を・・・、自分で・・・、自分の頭にあてて・・・、ひいたのだ。
真っ赤・・・。
真っ赤に目の前が染まった。
どちらかというと、朱色にも似た赤。
血だ。
ビリーヴは反射的にそう思った。
血とは似ても似つかないのに・・・、ビリーヴは思った。
レンの血だ・・・。
彼は倒れたレンの死体に目を下ろした。
幸せそうなレンの顔。
でも、頭は貫通していて、純白だった服は、彼の血で真っ赤に染まり
彼が嬉しそうに話していたビリーヴの瞳と同じ色をしているピアスも、血がついていて・・・。
ひどい仕打ち
初めて親友だと思ったのに・・・。
自分にはないものをもっていたのに・・・・。
こんなひどい仕打ち・・・。
「・・・・・ずるいよ、レン・・・。私を残していくなんてズルイよ・・・、レン・・・・」
そしてレンの頭をそっとなでる・・・。
愛しげに・・・。
「あぁ、そうだった。お前はこの目がほしいのだったね。
いいよ、あげる。約束だったからな。お前が・・・・お前が、死・・・、死ん・・・死んだ・・・・ら・・・、この目を・・・・やる・・・って・・・・・・約束・・・・・・したからな・・・・・」
涙・・・。
そんなの流したのは初めてだ。
人のために流したのなんて・・・。
ビリーヴは自分の目に手をあてた。
そして器用に抉り出したのだ、眼球を・・・。
痛みなど感じなかった。
ただ、血で・・・。
血で、レンが見えなくなった。片方だけの目なんてどうでもいい。
ビリーヴはただ、レンを見て痛かっただけなのに、血で見えないなんて・・・。
「レン・・・、やるよ・・・・。約束守っただろ・・・・。なぁ、レン・・・・、レン・・・・・・・・・・・」
返答がなかった・・・・・。・・・・あるハズもない・・・・・・。
ビリーヴは急に自分が一人ぼっちになってしまったようで、たえられなくなった。
「うわぁあああああああああ!!!!!」
I ・ eye ・ 愛
よく晴れた日、秋が近づいた夏の日、1人の少年が死んだ。
-俺、レンっていうんだ、ヨロシクな!-
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