【第3部ブルー編】目覚め

「な、何故目覚めた!?」
「制御装置を解除しないかぎり、目覚めることはないのに・・・!」
「急げ!長官に知らせるんだ!」

 進入者のささらなど、そっちのけで慌てる警備員たち。
 ささらはますますいやな予感がする。

「おまえ、何をした!?」
 警備員の一人が声をあらげて、ささらに尋ねる。
「え!?え!?」
 こっちが聞きたいくらいなのにッと、ささらはオロオロするばかり。

「ゴチャゴチャうるせぇな・・・」
 彼が喋った。
 顔だけじゃなく、声や喋り方までなんて凶悪なのかッ。
 ささらは思う。

(あぁ、もしかして・・・)

 彼は自力で自分を縛っていたコードを引きちぎる。
 警備員たちが身構えた。

(いや、もしかしなくても・・・)

 彼は警備員たちをギロリと睨みつける。

「よくも長い間、こんなところに閉じ込めやがったな」

 彼から感じたのは、背筋がゾッとするほどの殺気。

(あたし、マズイもの起こしたんじゃ・・・!?)

 ささらは青ざめる。

 彼は大きく手を振り上げると、自由に動けるコトを確信し、ニヤリと笑う。
 そして右手を勢いよく地に打ちつける。

「!?」

ドオンッ!!

 辺りは光に包まれ、煙に包まれる。
 煙がはれると、彼の近くにいた何人かの警備員が倒れていた。
 
(何てことを・・・!)

 ささらは息をのんだ。

「取り押さえろ!」
 ささらが立ち尽くしていると、警備員たちが彼をおさえようと、攻撃にかかる。
 しかし、彼は一気に襲い掛かってきた警備員たちを、いとも簡単に振り払う。

 彼に傷つけられる警備員たち。
 そして、彼等を傷つけることを楽しんでいるかのように笑う彼。

 ささらは目の前の光景に、立ち尽くす。

「!」
 すると、彼は片手で警備員の一人の胸倉を掴み、もう片方の手に大きな衝撃波を作り出した。

 殺される-・・・!

 そう察した瞬間、ささらは風の力を解放した。

「やめて!」

 突然起きた爆風は、彼に一瞬の隙を作るのには充分だった。
 ささらは素早く、彼の手から警備員を解放する。

「・・・・・!」
 その場にいる全員が、一瞬の出来事に驚く。
 宙に浮かぶこの少女は、自分たちが束になっても敵わなかった相手に、対抗できる程の力を持っているのか。

 警備員の一人を救出したささらは地に足を着け、彼の方を振り返る。
 彼は驚いた顔をしていたが、ささらと目があうと、ニヤリと笑う。

「へぇ、まともに戦えそうなヤツがいんじゃねーか」
「・・・・・!」
 じっと見据えられて、ささらはひるむ。
 思わず飛び出したものの、彼の力が自分より上であることは、見ていればわかった。

 彼の強さはおそらく、前の冥界戦の比じゃない。
 あのときだってあんなに苦戦したのに、それ以上の力を持つこの男を、自分一人でどうにかできるワケがない(この辺は2部の話なのでスルーよろしく)

「こんないたいけなお嬢さんがネェ・・・」
 しかし、彼の興味は確実にささら一人に向かっていた。
(どうしよう・・・)
 ささらはいつ襲い掛かって来るかわからない彼を前に、体を強張らせ、構える。

 殺気を感じた。

「!?」

ダンッ!

 気付くと、ささらは勢いよく床に叩きつけられ、ぐいっと胸倉を掴まれる。

(は、速いし強いし・・・)

 じんじん痛む背中に涙ぐみながら、ささらは思う。
 とにかくあがこうと、腕に力を入れると

ガンッ!!

 先ほどの衝撃で壁が崩れたトキ、手に入れたのだろうか。
 彼は長い鉄パイプをささらの顔の真横に、物凄い勢いで突きつけた。

「・・・・・!!!!」
 ささらは目を見開く。
 その鉄パイプは、床にめり込んでいた。

(ホントにヤバイ・・・!)
 少しでも抵抗しようものなら、容赦なくやられる。
 彼からはそんな殺気がガンガンに出ていた。

「てめぇ・・・、何者だ」
 不愉快そうな顔で、彼は尋ねる。

「あ、あなたこそ・・・」
 ささらが口を開きかけると
「聞いてるのは俺だ!」
 彼はささらの胸倉をさらに強く掴み上げる。

(苦しい・・・!)
 こんな状態では、答えられるものも答えられない。

「てめえと会った覚えなんかねーが、一応聞く。俺を知ってるのか?」
 同じことをこっちだって聞きたいのに・・・。
 しかし、ここでまた質問すれば、会話が進まないのはわかってる。

「し・・・、知らない・・・。でも、あたしの知り合いにすごく似てる・・・」
 ささらは答えた。

「知り合い?」
「あたしが聞きたいよ。どうしてあなた、みかどさんにそっくりなの・・・?」
 ささらが尋ねたトキだった。

「手を離してやれ!」

 彼がこたえる前に、その場をおさめる声が響いた。

「伊達長官!」
「あさひ博士!」

 警備員たちが、入口に立ちはだかる二人の男の名を呼ぶ。

「・・・誰だ、てめぇは」
 話が通じそうな男が現れ、彼はようやく、ささらから手を離す。
 そのうちの軍服を着た男が、まっすぐ彼の元へと歩み寄る。
「私は惑星ブルーの総指揮官、伊達正宗だ」
 そしてひるむことなく、名を名乗った。

「紅」
 伊達は彼をそう呼んだ。

(紅・・・?)
 ささらは彼を見上げる。
 それが彼の名前なのか。
 ・・・ん?顔はみかどさん似なのに、名前は別の人と一緒だぞ?しかも結構濃かった人。

「君は今、400年の眠りから目覚めた」
(よっ、400年・・・!?)
 聞き慣れない年数に、ささらは何のおとぎ話かと思う。

「君は我々が動力を入れない限り、目覚めることはできない。しかし現に今、彼女の力で目覚めた」
 その場にいる皆の視線が、ささらに向かう。
 ついでに紅にめっちゃ怖いメンチもきられた。

「大丈夫だった?恐かったでしょ?」
 すると、座り込んでいるささらに、伊達の隣にいた男が、気さくに話し掛けた。
 確か、あさひ博士と呼ばれていたっけ。

「アンタにも聞きたいコトがたくさんあるわ」
 気さくそうなイケメンのこのお兄さん。
「一緒に来てもらうわよ」
 口調がお姉なんですケド???
 ささらは目を点にした。

 あさひに手をひかれ、ささらは部屋を移動しようとする。

「てめーらの話になんか興味はねーよ」
 しかし、紅はその場を動こうとはしなかった。

「ある程度事情を知ってるみたいだがな。なら、俺がブルーを、ヘドが出る程嫌いなコトも知ってるだろ」
 そう言って伊達とあさひを睨みつける。

 伊達とあさひは顔を見合わせると、小さくため息をついた。
 そして紅をなだめるよう、伊達は事実を述べる。
「きみが400年前、暴走したコトも知っている。そしてそれを止めた4人の兄弟たちは、もうここにはいない」
「・・・何だと?」
「君が眠っていた400年間で、事態は大きく変わった。これから話そうとしているコトは、君自身に関る話だ」
 そう言うと、伊達は再び、あさひとささらがいる入り口へと戻る。

「着いてきなさい」
 そう言い残すと、伊達はあさひとささらとともに、その部屋を去る。

(400年前・・・?暴走・・・?4人の兄弟・・・?)

 ささらには何もかもがわからない。
 そもそもここはどこで、この伊達という男やあさひという男たちは、どういう組織の者なのか。

 そして、彼―――紅は、一体何者なのか。
 何故こんなにもみかどにそっくりなのか。
(中身は全然似てないケド・・・)
 助け出されて、少し安堵したためか。
 初対面でいきなり殺される勢いで襲われたコトに、今ごろフツフツと怒りが湧いてきた。

 とにかく、今は状況を把握しなくては。

 あさひに連れられ、ささらは思った。

※2025年現在、伊達長官にあたる彼のお名前がまだ決まってないので、仮表記です。
Pureッ子ルールに則って、漢字一文字で表記できるお名前募集中。

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