【第1部】さくとらんぼのおさんぽ

あおむしさんが考えて下さったさくらんぼ双子ちゃん、スピンオフ話書いてみました。

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 地底王国に住む、さくらんぼのさくとらんぼという双子ちゃん。
 第5話(2)でも紹介したように、彼らは地底王国の商店街で、果物やさんを運営しています。
 おとなしい性格のさくに、元気で活発ならんぼ。
 2人は大の仲良しで、新鮮な果物を見極める能力はバツグンです。
 ただ、たまに自分たちが商品に間違われてしまうのには、困ってしまうケド。

 こんなさくとらんぼ、実はこの場所から動くコトができません。
 彼らは普段、自分たちのお店の中で、お客さんと目線があうようにと、糸でつってあります。
 あまりに小さな体なので、一定の距離を動くのにも大変な時間がかかるし、動き回ったりしたら、誰かにふんづけられてしまうかもしれません。
 なので、普段はずっとここにとどまっています。

 毎日いろんなお客さんが尋ねてきてくれるし、寂しくなんかありません。
 だけど、やっぱり外の世界も見てみたいよネ。
 こないだのささらちゃんのコトにしてみたって、せっかくこの島に新しいお友達が住み始めたというのに、自分たちから会いに行くことはできなかったのだから。
 ソレに何より

 ずっと地下にこもっていたら腐ってしまいます。

 では、こんなトキ、さくとらんぼはどうしているのでしょう?

 こんなトキこそ、東の番人!
 地底王国の入り口は東にあるために、ピュア島の東の番人、ひかりさんは毎日地底王国へやってきて、みんなと一緒に遊んでくれます。
 また、外の情報を持ってきてくれるのもいつも彼。
 さくとらんぼのために、新しいお友達、ささらちゃんを連れてきてくれたコトもあったネ(第5話の(2)

 こんなひかりさん、果物屋さんが休業の日は、いつもさくとらんぼをお散歩に連れて行ってくれるのです。
 今日はそんなお出かけの日。

「うわ~、やっぱ外は気持ちがいいなー!」
 ちょっと大きなお山の上で、ひかりさんとさくとらんぼは一緒にピクニック。
 らんぼはあたりをキョロキョロ見渡しながら、はしゃぎます。
「今日はとびきりいい天気だしなー」
 ひかりさんも笑顔で二人に話し掛けてくれます。

「あ、あれはもしかして、ピュアくんの家ですか・・・?」
 さくが指差す方向には確かに、ピュアくんのおうちが。
 よくよく目をこらすと、これからピュアくんとぽち、ささらちゃんが一緒にお出かけのご様子。
 それを見送るみかどさんは洗濯中。
「おー、本当だ。どこ行くんだろうな」
 ひかりはそんな彼らを見ながら、大きく手を振ってみる。

 すると、それに一番に気付いてくれたのはぽち。

 ぽちに気付いたピュアくんも、ささらちゃんも、こちらに向かって手を振ってくれてます。
 ささらちゃんに声をかけられたみかどさんも、こちらを振り返り、手を振ってくれました。
 ひかりさんにつまんでもらって、さくとらんぼも彼らに大きく手を振りました。

 いつも商店街で出会うお友達に外で会うと、また気分が違うものなんだネ。

 山のてっぺんにつくと、大きな木を発見。
 その木陰で一休み。
 ここはさっきの場所よりもっと島がよく見渡せます。
 ふと、北西の方を見てみると、きのえくんとあおいくんに群がる、動物さんたちの姿が見えます。

群がっているのはよく見えないけれど、ウナギのきよてるくんやカエルのケンジくんたちのよう。

「ひかりさん、きのえくんとあおいくんは何をしてるんですか?」
 さくが尋ねると、ひかりさんも彼らのほうを見て、言いました。
「あおいは水使いだから、この南国で乾きやすいきよてるたちに、よく水遊びさせてやるんだよ」
 さくとらんぼはあおいくんの優しさに感動しました。

 そしてよくよく見てみると、きのえくんも他の動物さんたちと一緒に何かをしている模様。
「ひかりくん、きのえくんは何をしてるんだい?」
 今度はらんぼが尋ねました。


「きのえは植物使いでありとあらゆる植物が出せるからな。フラワーアレンジメント講座、やってるんだろ。結構あいつ、手先器用なんだよなー」
 さくとらんぼはきのえくんのシャレた感性に感動しました。
 しかもよくよく見ると、トムとボブもその講座のアシスタントをしてるじゃありませんか。
 ちなみにコレ↑は、手編みのかご。

「今度僕たちも教えてもらいたいな」
「うん」
 さくとらんぼはお互い顔を見合わせて、ニッコリ笑いました。

 ポカポカと温かい日差しが指す中、そんな様子を見守りつつ、ひかりさんも、さくとらんぼもウトウトしてきてしまいました。
「ん~・・・、ちょっと昼寝でもしてくかー」
「うん、そうだなー」
「おやすみなさ~い・・・・」
 そうして、三人はゆっくりとお昼寝タイムに入りました・・・・。

 夕方-。


「よー、ただいまー」
 ひかりさんが地底王国に帰ってきました。
「ひかりくーん!おかえりなさ~い!」
 ひかりさんが戻ってくると、地底王国にいる動物たちは、わーっと彼のもとに集まってきました。

「さー、さくとらんぼを元の場所に戻してやらなきゃ・・・・」
 ひかりさんはまだすやすやお昼寝モードだったさくとらんぼを、ポッケにいれて帰りました。
 ふと、ぽけっとに片手を突っ込むと

 ・・・・・・・・・・・・・・いない。

「あれ?」
 ひかりさんは反対のポケットにも手を突っ込みましたが、・・・・・いない。
「ひかりくーん、どうしたのー?」
 動物さんたちが尋ねます。
「あっちゃ~いけねぇ、さくとらんぼ落としてきたみてーだ」

 -間-

「ええええええええ~~~~!!?」
 パニックin地底王国・・・。

 さくとらんぼが目を覚ますと、そこは知らない森の中。
「あれ~・・・?ここどこだ~・・・?」
 らんぼ寝ぼけ眼で辺りを見回すと、辺りはすっかり夕暮れ時。
「ひかりくんがいないネェ・・・」
 小心者のさくは、ちょっとビクビクしています。
「おかしいなぁ、このままじゃ帰れないよ」
 らんぼは走り出そうとしました。しかし

 何かに引っ張られました。
「って、さく!オマエも走ってくれなきゃ、動けないじゃんか!」
 らんぼはずびしっと突っ込みます。
「だって~、下手に動かない方がいいんじゃないかな?ひかりくん迎えにきてくれるかもしれないし・・・」
「でも、早くしないと日が暮れちゃうぞ!」
「でも~・・・」
 めずらしく意見の対立。
 二人がわきゃわきゃ言い合っているトキでした。

 ぽたッ・・・・

 さくとらんぼの真横に、赤い液体が2、3滴たれてきました。
 さくとらんぼは何だろうと思い、上を見上げました。
 すると、真っ青な顔で口を血から垂らした美青年が、フラフラ歩いているではありませんか!!

「ぎゃぼーーーーーーーーー!!!!!」

 それを下から見上げたときの恐怖といったらありません!
 さくとらんぼは一目散にその場から逃げ出しました。

「ん、今何か声が聞こえたような・・・・げふっ!」
 言わずともわかるでしょうが、その美青年とはくれないさんでした。

「えーんえーん、怖かったよー!」
「何だよあれー!人間かよー!」
 人間だよ。
 二人の気持ちが落ち着いて、ふと、辺りを見回すと、辺りはもう薄暗くなってきました。
「さく、どうしよう。本当に暗くなってきちゃったよ・・・」
「そ、そんなコトいったって・・・」
 ビクビク震えながら涙を目にいっぱい浮かべるさくとらんぼ。
 このままここで、野宿をしなくてはならないのでしょうか。
 またあんな怖いおにーさんが現れるかもしれないのに・・・。

「うわー、すっかり遅くなっちゃったネ、みかどさん、怒ってるかなぁ」
「大丈夫。お土産のマンゴーもとってきたから、何とかなるだろ」
「キィー」
 そんなトキ、聞き覚えのある声が!
「ピュアくん!ぽち!ささらちゃん!」
 さくとらんぼの声がキレイにハモりました。

 ピュアくんたちはその方向を振り返ります。
 見れば、小さなさくらんぼが涙を浮かべてこちらを見上げているではありませんか。
「どうしたの、二人とも!」
 ささらちゃんはさくとらんぼを拾い上げました。
「えーんえーん!怖かったよー!」
「吐血ー!吐血ー!!」
 知っている顔を見た2人は安心してしまい、わんわん涙を流しました。
 ちなみに、「吐血ー!」を聞いたトキ、何となく何のコトかわかって、思わず顔を見合わせたピュアくんとぽちでした。
「よしよし、もう大丈夫だからネ」
 ささらちゃんは2人を優しくなだめてあげました。

「ゴメンなー、ピュア、ささら、ぽち」
 地底王国へさくとらんぼを送り届けてあげると、元凶のひかりさんが苦笑いして迎えてくれました。
「うわーん、ひかりくんのバカー!」
「めっちゃ怖かったんだよー!吐血ー!!」
 まだ言う。
「ゴメンゴメン、これからは気をつけつるから」
 ひかりさんも、自分の手の上で泣くさくとらんぼをなぐさめてあげました。

「それにしてもひかりー、うっかりしすぎだぞ」
 ピュアくんはびしっとひかりを指差していった。
「次回からはちゃんと紐で繋いどくようにしとけー。そしたらもうこんなコト起こんないだろうしな」
 ひかりさんは苦笑いして言いました。
「そうだな、そうするよ」

 ピュア家。
「はぁ!?さくとらんぼ落としたー!?」
 帰ってきたささらちゃんたちに事情を聞いたみかどさんはビックリ。
「それ、番人として、や、人としてどーなのよ」
「ま、まぁ~、今回みたいなコトがあったから、次回からは大丈夫なんじゃないかなぁ・・・?」
 ささらちゃんは苦笑いしながら答えました。
「今度ひかりに紐作って持ってってやろーな」
「きぃー」
 そしてピュアくんとぽちは、オモチャ箱を漁りながら言いました。

「二人とも、今日は本当にゴメンな」
 その夜、ひかりさんはさくとらんぼをいつもの場所に戻しながら、いいました。
「うん、もう大丈夫だよ!」
 さくとらんぼも、気持ちはすっかり落ち着いたようで、にこにこ笑って答えてくれました。
「ねぇねぇ、また果物屋がお休みの日は、また連れてってネ」
「今度はきのえくんのフラワーアレンジメントに行きたいよー」
「OKOK。じゃあ今度の休みはきのえたちんトコ行こうな」
 そんな約束を交わして。
 今日のさくとらんぼのお散歩はおしまい。

 また今度、ステキなお散歩ができるといいね。
 きっとそのトキは、ひかりさんの腰にはピュアくんたちが作ってくれた、さくとらんぼ専用の紐が、ついていることでしょう。

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