ウィローちゃんにあたる魔法使いを三つ子ちゃんに。
彼らの設定原案は、藍上葵さんがして下さいました!
バロック団オーストラリア支部。
日本のバロック団士官学校を卒業したばかりの団員が三人。
辺境の村をバロック団の領地にするために、このオーストラリア支部に呼び出されていた。
「思ったより早く片付いたよな」
「そうだね。かなり辺境の村だったし、向こうも素直に交渉に応じてくれてよかったよ」
「やだなぁ。向こうがあれだけ素直に応じてくれたのは、兄さんが脅したからじゃないですか」
無事に任務終え、オーストラリア滞在中に臨時で与えられた部屋で休む三人。
わきあいあいと話をする三人の青年たち。
とはいえ、士官学校を卒業したばかりだ。
年は18。
まだまだ幼さの残る顔つきだった。
しかしこの三人の顔、目、鼻、口、髪形、どれをとってもまったく同じといっていいほどだ。
服装と顔つき、髪や目の色は違えど、これが白黒マンガで三人が同じ表情をしたら、おそらく区別はつかないだろう。

「そうそう、『この村の住人を全員ヒトデにしてやってもいいんですよ』とかいいやがって」
そういっていたずらっぽく笑う赤色の髪の男は、長男のマツ。

「海から遠い村の人々にそんなコトいうなんて、兄さん残酷ですよー」
話の内容にそぐわず、純粋な笑顔を向ける、緑色の髪の少年は、末弟のウメ。

「マツ兄さんが村の建物どかどか壊すからだよ。あれじゃあの村をバロック団のものにした後、バロック団が修復費を負担しなきゃいけなくなるだろう?そしたら僕たちの評価は落ちるじゃないか」
そして涼しい顔をして笑う、金髪の髪の少年は、次男のタケ。
三人揃って松竹梅兄弟である。
「おいおいおい、そんなアホくさい名前で呼ぶな!」
怒り顔のマツに、
「士官学校時代もよくそれでいじられて、僕たち傷ついてるんだからさぁ」
やれやれといった表情のタケ。
「失礼なナレーターさんですネ。今度僕たちのコトをそうよんだら、ナレーターさんを牛に変化させて、焼肉にして食べちゃいますよ?」
極めつけは純粋無垢な笑顔を崩さない、ウメ。
・・・恐ろしい。
兄弟揃って、このナレーターを脅迫してくるとは・・・!
「ところで、2人とも」
こんなヤツに構ってられないといった顔で、話題転換をするタケ(失礼な)。
「ヴァースト総帥のご子息が、家出してるのは知ってるよネ?」
「あぁ、有名な話だからな。もう3年近く帰ってきてねーんだろ?」
「しかもこの3年で数十人の刺客が連れ戻しに行ったのに、誰一人として、連れ帰すコトができなかったそうですネ」
『何を今更』と、2人はバロック団団員なら誰もが知っているその事実を述べた。
「そう、何せ相手はあのみかど先輩だからネ」
タケは二人の言葉を聞いて、うなずいた。
マツがふと上を向いて、士官学校時代を思い出す。
「憧れだったよな~、みかど先輩。強くてカッコよくて」
「士官学校生だったのに、団員顔負けの実力で」
ウメもひとつ年上だったみかど先輩の雄姿を思い返し、目をキラキラと輝かせる。
「それで、みかど様が逃亡した所はどこか知ってる?」
タケが何か企みを秘めた顔で静かに笑う。
「知るワケないだろ。そもそも総帥も隠したがってるらしーし」
マツが言うと、タケはそうだよネといい、にっこり微笑む。
そんなタケの様子を見て、ウメが察した。
「まさか兄さん・・・」
自分の言いたいことを察してくれたウメに対し、タケは満足したように微笑んだ。
そしてさらりと一言。
「そう、わかっちゃったんだ。みかど様の居場所」
その言葉に、マツもタケも目を見開いて驚く。
「ママママジか、タケ!どーして・・・!」
マツが興奮してタケの胸倉を掴み、言い寄るが、タケの反応は至って落ち着いたモノ。
「新しい魔法試してみたくなってさ、オーストラリア支部長にかけてみたら、見事に話してくれちゃって」
さわやかな笑顔でさらりとこんなコトを言う。
「新しい魔法ですか?」
「自白魔法さ。何か重大な秘密を喋ってみろっていったら、簡単に口を割ったよ。まさか、みかど様のコト教えてもらえるとは思わなかったケド」
「おまえそれ系の魔法上手いもんな」
オーストラリア支部長相手によーやるわ、と、マツは思った。
「僕のいいたいこともわかるよね?」
タケが妖しくとマツとウメに笑いかける。
「あぁ。そのみかど先輩がいるトコが、ここから近いんだろ?」
マツがニヤリと笑った。
「僕たちでみかど先輩を連れ戻しにいっちゃうんですね!」
最後に、ウメがウレシそうにニッコリと微笑む。
「そう、島の名前はピュア島」
そういってタケは持っている杖を一振りして、世界地図を取り出した。
それをテーブルの上に広げ、二人の注目を促す。
「ここ、オーストラリアのほぼ北側に位置している」
タケはオーストラリアの北部にある、島も何もない海を指差した。
「地図にものらないような、小さな島だ」
「確かに。聞いたコトねー名前だもんな」
「そうですネェ・・・」
地図から目を離し、マツがタケに尋ねた。
「でもよぉ、真正面から戦っていって勝ち目はねーだろ?何か策があるのか?」
「ふふ、あの魔法を使うのさ」
タケが静かに笑った。
そんなタケの微笑を見、マツとウメはハっとする。
「タケ!あの禁断の魔法を!!」
「よりにもよって、あのみかど先輩に・・・!?」
マツとウメは緊迫した雰囲気でタケに尋ねた。
タケは妖しくニヤリと微笑み、答える。
「そう、相手をクラゲに変えてしまう、クラゲーラ魔術を使うのさ!」
「なんてことだ!」
「よりにもよって、容姿端麗、成績優秀、文武両道、完全無欠なみかど先輩を、クラゲに変える魔法を使うだなんて!!!」
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すみません、ナレーター帰っていいですか・・・?
「こらぁ!てめーはさっきから!!ちゃんと仕事しろよ!!」
「クラゲーラ魔術、みかど先輩に使う前に、おまえに使うよ?」
あー、わかったわかった。
「任務が早く終ったおかげで、残り1週間は自由時間」
タケは杖をふるい、テーブルに広げていた世界地図をパっと消した。
「よっしゃ、今すぐ出発しようぜ!」
マツは勢いよく椅子から立ち上がり、愛用のほうきを手にした。
「マツ兄さんもタケ兄さんも、気が早すぎですよ~」
そういってクスクス笑うウメも、仕方ないなといわんばかりに、荷物の準備を始める。
「思い立ったが吉日だろ!ウメもさっさと準備しろよ、これが成功すりゃ、出世間違いなしッ!!」
すっかりヤル気マンマンのマツ。
「そう、過去3年間にわたって、誰一人として達成できなかった任務を、今、僕らがこなそうとしているんだよ」
マツほどあからさまに態度には出さずとも、タケもすっかりヤル気マンマンである。
「兄さんたち。いくら禁断のクラゲーラ魔術があっても、相手があのみかど先輩だというコトを忘れないで下さいね」
ウメが念を押すように言うと、マツもタケも「当たり前」といわんばかりの余裕マンマンの表情で、頷いた。
「さぁ、そのピュア島とやらへいくとするか!」
マツが声をあげる。
標的はバロック団総帥の長男のみかど、ただ1人。
はてさて、恐ろしい魔法を使うこの3兄弟相手に、ピュア島のみんなは立ち向かえるのであろーか・・・?
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